内容説明
林羅山(1583~1657)、江戸初期の儒学者。京都・建仁寺で少年期を過ごした後、朱子学に開眼。藤原惺窩に学び、家康をはじめ、歴代の将軍に仕えた。方広寺鐘銘事件にも儒者として関与し、また寛永期の武家諸法度を起草、幕府政治に関わり、徳川体制の確立に尽力した。権力に阿る御用学者か、朱子学の聖か、その生涯に迫る。
目次
序章 すぐれた業績 低い評価
第1章 朱子学開眼
第2章 藤原惺窩との出会い
第3章 徳川家康との日々―上昇
第4章 秀忠の時代―安定
第5章 家光による登用―権威
第6章 文芸活動、そして家族
第7章 家綱の時代
終章 羅山の望みは叶ったのか
著者等紹介
鈴木健一[スズキケンイチ]
1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、学習院大学文学部教授。専攻は、日本古典文学(特に江戸時代の文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
65
やはり来週の現社授業向け。林羅山の学問の本質:江戸時代を代表する学問利用法を初めて実行した人。「さまざまな<知>を集めてきて、合理性に基づいて秩序を与え、それを広く浸透させる」というのが著者のご説明(10頁)。驚異的な読書の日々(130頁~)の項目は、読書家からしても刮目であろう。羅山先生の読書への情熱である。漢文が原文のようである。一度に数行読み、加齢とともに加速させたという(132頁)。速読術をこの1640年の時代に実践していたことに敬意を表する。令和読書人も学ぶところがある。2022/09/10
読書実践家
9
林羅山が面白い。日本史の魅力について知った。伝記を読むことで、色んな偉業や苦悩を知ることができる。学問が大好きな林羅山とハビアンとの地球球体説に関する議論は面白かった。2016/03/05
とし
7
林羅山の伝記。天海、金地院崇伝と並んで家康を支えた儒学の大家。家康の御用学者として有名で、腰巾着的なイメージからかあまり評価を得てない羅山ですが、僕はこの人、嫌いじゃないです。その生涯と業績をちゃんと知れば、この秀才の才能の大きさがわかるでしょう。家康と江戸幕府を利用して、自分の知識欲と出世欲を思う様に満たし、誰にも気づかれぬほど巧妙に儒教的な文化を日本に広く浸透させた、ある意味天才的なフィクサー。圧倒的な読書量と知識量、その結晶としての著作が、現代の日本人に与えた影響は、巨大です。 2016/04/14
アメヲトコ
5
湯武放伐論や方広寺鐘銘事件などから否定的に語られがちな林羅山の再評価を試みた一冊。世俗的立身の欲望と純粋な知的欲求とは一人の人間のなかで矛盾しつつも両立しえるとする著者の人間観は、人物叢書の堀氏による評伝を読んだときに感じた違和感を解消するもので、我が意を得たりでした。世界の全貌を知ろうとするある種の博物学的知的営為の先駆性はもっと評価されるべきであろうと思います。2020/10/30
きさらぎ
5
近世的な学問の仕組みや枠組みのパイオニアとしての羅山の役割を重視した一冊。博士家の特権だった儒学の公開講義を試みたり、道春点として知られる訓点を施して漢籍を紹介したり。一般向けの様々な簡略な啓蒙書も書いた。大名の求めに応じて格言集も作った。家系図や武家諸法度などの編纂にも携わった。好奇心と知識欲が旺盛で、寝る間も惜しんで書を読み記憶した羅山は、死ぬ一年前「3年有ればなんとかなる」と二十一史の読破に取り組んだ。権力者に認められる為の曲学阿世や学識をひけらかす俗臭は隠しようもないが、そこに彼の人間臭さもある。2018/11/07