Ｍｉｎｅｒｖａ日本史ライブラリー 日本政治史のなかの陸海軍―軍政優位体制の形成と崩壊 １８６８‐１９４５

小林 道彦/黒沢 文貴【編著】

ミネルヴァ書房（2013/02発売）

• サイズ A5判／ページ数 251,／高さ 22cm
• 商品コード 9784623064632
• NDC分類 392.1
• Cコード C3321

内容説明

「非政治的軍隊」はなぜ政治化したのか。明治国家の指導者たちは「統帥権の独立」が孕むリスクに気付いていなかったのか。本書は、陸海軍が維新変革の渦中で産声を上げ、やがて官僚制度の整備とともにその制度的自立化を強め、ついには統帥権を肥大化させ、「軍部」として国政上に大きな力を振るうようになる、そのメカニズムを「政治史のなかで」解明していく。軍人、政治家、官僚、ブレーン集団…様々な人物像に目配りしながら日本陸海軍の盛衰を立体的に描く、最新の成果。

目次

第１部　軍政優位体制の形成（明治維新期の政軍関係―強大な陸軍省と徴兵制軍隊の成立；日清・日露戦争と陸軍官僚制の成立）
第２部　統帥権改革の頓挫と「革新」への胎動（児玉源太郎と統帥権改革；大正・昭和期における陸軍官僚の「革新」化）
第３部　軍政優位体制の崩壊（海軍省優位体制の崩壊―第一次上海事変と日本海軍；国家総力戦への道程―日中全面戦争と陸軍省軍政官僚たちの葛藤；日本海軍の戦争指導と社会科学者・技術官僚の役割）

著者等紹介

小林道彦［コバヤシミチヒコ］
１９５６年埼玉県生まれ。１９８８年中央大学大学院文学研究科国史学専攻博士後期課程単位取得退学。現在、北九州市立大学基盤教育センター教授。博士（法学）

黒沢文貴［クロサワフミタカ］
１９５３年東京都生まれ。１９８４年上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程単位取得退学。現在、東京女子大学現代教養学部教授。博士（法学）（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

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[ロッキーのパパ]

専門書なので敷居が高いかなと心配したけど、これまで新書などで得た知識でなんとかついていくことができた。まあ、素人並みの薄っぺらな視点で捉えていたことを思い知らされたけど、旧日本陸海軍の評価は、単純な一元的な物差しでは判断できないことを再認識できたことは良かった。特に、教育制度改革など陸軍の革新的な活動には目をひらかされた。

2013/05/30

[hurosinki]

凄い先生方の論文集。武力を背景とする藩の政治介入を懸念し、徴兵令により兵は藩との繋がりを解消した（第1章）。佐官以下の士官も、日清戦争後には抜擢により出身地問わず能力本意で進級する（第2章）。こうした軍の非政治化と共に軍政機関の陸軍省も制度的に自律していく。台湾出兵において対清開戦の危機を引き起こすという正院の危うい戦争指導を受け、陸軍省は、内閣の政治介入に対抗し省務・人事の高度の自律性を得る（第1章）。

2020/08/24

[ワッキー提督]

日本政治史の中における陸海軍についての論文を集めた一冊である。明治維新当初から敗戦までの期間を扱っているため、明治初期に関する論文は知識不足もあり目新しいものであった。興味深い点は種々ありここでは書ききれないが、明治憲法下における政軍関係の研究が、一筋縄でいくものではないことが実感された。

2014/03/24

[Takeshi Kubo]

本書の中の「海軍省優位体制の崩壊」という論文では、第一次上海事変を契機として、その対応を誤った海軍省を軸足とする条約派に対し、強い疑念を抱いた軍令部に軸足を置く艦隊派は、軍内における権力掌握に注力していくという過程が描かれています。 第一次上海事変は、満洲事変に付随する形で発生したことを考えると、満洲事変の発生は、結果的に海軍内部における軍政と軍令の権力関係の変化にも影響を与えていたとも捉えられ、満洲事変そのものの評価にも大いに関連すると言えるでしょう。

2015/03/31

[ヒトハバレイ]

戦間期の日本は平和主義の風靡により反軍感情が根強くあったという記述は道理でこそあれ、感覚で理解しているものではなく新鮮だった。第一次大戦の総力戦に衝撃をうけた新時代の将校が、大陸の資源に注目して総動員体制を構築していったということであろうか。穏健派が消極策で後手にまわるあまり短期決戦を指向する側が台頭し、全体として近視眼的となっていく構図はリーダーシップを考える上で非常に興味深い

2014/11/21