内容説明
平等主義を阻む真の敵は「平等」を願う私たちの心の中に潜んでいる。このようなパラドクスがなぜ生じてしまうのだろうか。本書は、社会の中に格差や序列を生じさせ、それを維持しているメカニズムを、社会心理学の最新の研究成果を参照しながら解き明かしていく。日本社会に特有の階層システムにも言及し、「格差社会」と言われる現代の日本で何が起きているのかを考えるためのヒントを提供する。
目次
第1章 格差と序列を生み出す心理(社会的支配理論;システム正当化理論)
第2章 格差と序列を支えるイデオロギー(公正的世界観;相補的世界観;公正的世界観と相補的世界観)
第3章 社会的ヒエラルキーと文化的ステレオタイプ(正当化動機とステレオタイプ;ステレオタイプ内容モデル;相補的ステレオタイプ;集団間比較と相補性;社会的判断と相補性)
第4章 日本社会における平等幻想と文化的ステレオタイプ(現代日本の格差・不平等問題;隠蔽される不平等)
第5章 社会的アイデンティティと階層システム(社会的アイデンティティと集団間格差;中間層の心理)
著者等紹介
池上知子[イケガミトモコ]
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程学修認定退学。博士(教育学)。現在、大阪市立大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
12
シダニウスらによると、死刑制度への存続を望む勢力とは、社会的支配志向性の強い者という(2006年、8頁)。日本にはある。フランスにはない。この違いは、人権へのスタンスや歴史によるのだろうか。相対的剥奪感とは、自分と同じ年代の人たち、仕事をしている人たちと比べて、自分の収入が低いとき、自分は損をしている、不公平と思う感覚(58頁)。博士号あるFBの友人は妻子持ちの准教授だろ? ま、負け組の俺からすれば、面白くはないし、年長フリーターは50歳ぐらいでかなり格差を実感するという新書も昨日目にした。理不尽だなと。2013/09/06
読書依存症
2
最近目にした相共通することば、猪木武徳氏の「人間は二重思考、つまり矛盾する異なる考えを同時に持つことができる存在」(読売)、平野啓一郎氏の「分人主義」(読売)。渡辺一夫氏の本にも、「人間というものは複雑であり一つのことを信じたとしても信じていると思っている自分を見つめて赤い舌を出しているもう一つの自分を感じ取れるもの」(著書)。 平等主義を標榜しながらそれとは裏腹に格差や不平等を肯定し維持しようとする態度が潜在している、それが人間の心理。2012/12/28
saku_taka
0
格差や序列などの社会システムはどうして維持されるのか。社会心理学の観点から検討している。2015/09/08