内容説明
文明開化後、日本は近代化を急速に推し進めたが、そのための歪みが戦争という悲劇をもたらした。戦後は経済主義一辺倒に陥り、未曾有の大災害に見舞われた今日、その限界もまた、露呈しつつあると言えよう。しかし、危機は崩壊ではない。崩壊に至るか、新たな方向に転換しうるかの、分岐点ではなかろうか。本書では、今われわれが直面している諸問題を社会哲学により考察し、新たな文明像を模索する。社会科学を長年講義してきた泰斗による、未来への羅針盤、ついに刊行。
目次
第1章 存在と思考および価値をめぐる社会哲学
第2章 人間および歴史をめぐる社会哲学
第3章 自然をめぐる社会哲学
第4章 哲学的探求と経験科学的探求
第5章 社会科学と哲学の対話
第6章 社会哲学のパンセ
著者等紹介
田村正勝[タムラマサカツ]
1968年早稲田大学第一政治経済学部卒業。1974年同大学院経済学研究科博士課程修了。現在、早稲田大学社会科学総合学術院教授。専攻、経済政策、社会哲学。経済学博士(早稲田大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マウンテンゴリラ
1
新たな形而上学の構築、普遍の追求等、今世の中で哲学や宗教への期待が高まりつつある背景には、地球の危機、人類の危機が迫りつつあるという意識の共有があるように思われる。そこには近代文明にたいする閉塞感と、それを乗り越える新たな価値観への期待が表れているようにも感じられる。その近代文明が価値あるものとして掲げてきたもの、すなわち合理化、工業化、民主化は、もはや多くの場でその絶対性が疑問視されつつある。しかし本当の危機は、そのような社会制度の問題だけではなく、個々の人間、私のような典型的一般市民が、→(2)2020/01/27