内容説明
自らを「編集職人」「近江商人」と呼び、戦後日本の児童書出版を牽引してきた松居直。その人生は、綺羅星のごとき作家たちとの邂逅に彩られている。本書では氏の生誕から『こどものとも』を手がけるに至るまでを、時代背景とともに鮮やかに描き出す。
目次
はじめに―よみがえった子守唄
第1章 幼少期から大学時代まで(『コドモノクニ』と帝展;民俗学と歴史研究の中学時代;キリスト教とコミュニズムの間で)
第2章 福音館入社から『母の友』創刊へ(駆け出しの編集者、小辞典を作る;月刊誌『母の友』と一日一話;創作童話の刊行に向けて;『母の友』から生まれた作品、作家)
第3章 『こどものとも』を作る(独創的な月刊絵本をめざして;『こどものとも』創刊号ができるまで;茂田井武の遺作『セロひきのゴーシュ』;『こどものとも』三号から十号まで;文化をどう伝えるか)
著者等紹介
松居直[マツイタダシ]
1926年京都府生まれ。日本美術に親しむ幼少期、学生時代を経て、旧制中学在学中に敗戦を体験する。戦後は同志社大学法学部で学び、卒業とともに1951年金沢の福音館書店に入社。1956年に『こどものとも』を創刊、昭和期を支えた数々の才能を発掘、起用する。現在、福音館書店相談役、NPOブックスタート会長、財団法人大阪国際児童文学館特別顧問など、子どもの本の諸分野で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
55
福音館書店の成り立ちと子守唄の話の件は非常に興味深い。2018/04/29
ゆうゆうpanda
45
読み聞かせをした『ももたろう』の文があまりにも良かったので。福音館書店の元社長にして伝説の編集者。この人が発掘した才能からトキメキを貰って育ったのかなぁ私は。ご自身も幼少期から『コドモノクニ』にときめいていた。民話を調べて歩く活動に夢中だった少年期。戦前戦中は海軍に憧れる軍国少年。戦後は一転してキリスト教系の同志社大学へ。でも左翼系の友人も沢山。無類のミーハーとお見受けした。何に対しても無意識に子供の気持ちで素直に接してしまう。それは子供に本を与える側の大人として、とても大事な特性なのではないかと感じた。2016/07/15
ぱせり
12
本の帯に書かれた言葉「目には見えない大切なものを育み伝える」自身がそのように育てられた人であったからこそ、伝えられる力、言葉。創刊当時の『母の友』も『こどものとも』各号、作家・画家・編集者が渾身の力を尽くした挑戦だった。まるで、植物が小さな芽を吹き、どんどん伸びて、森になっていく様子を、早回しで一気に見ているようだった。 2012/08/24
kasmin
11
赤ちゃんの頃から松居直さん選りすぐりの絵本を読み聞かせてきました。多大な影響を与えてくださった方です。わくわくしたり、こわがったり、歓声をあげたり、目を輝かせた子ども時代の眩しい優しい様子が思い浮かんで懐かしい。福音館時代、茂田井武さんの遺作となった『セロひきのゴーシュ』有難い気持ちが込み上げてきました。三章の後半からおしまいの【おわりに】までは母語への熱い想いを感じて、この本に出会えて良かったと思えました。たくさんの親子が子守唄や絵本から巣立ち、大人になってもそれが豊かな肥やしになっていますように。。2016/01/17
ようこ
6
福音館の本がどのような気持ちや経緯で世の中に出ていったのかわかり、改めて初期のこどものともを読んでみたくなる。セロひきのゴーシュは特に。こどもに本を渡す立場の人たちには示唆にあふれている一冊2012/03/07