内容説明
奈良時代中期の権臣、後に恵美押勝と名乗った藤原仲麻呂。太政大臣と権力を上り詰めたのち、近江琵琶湖頭で非業の最期を遂げるその劇的な生涯とはいかなるものか。『続日本紀』を手がかりに賊臣とされてきた仲麻呂の生涯に迫る。
目次
第1章 仲麻呂の出生と出身―その長い雌伏期
第2章 仲麻呂と橘諸兄政権―光明皇后との紐帯
第3章 光明・仲麻呂体制―異形な政治体制
第4章 仲麻呂政権の成立―奈良麻呂の変と淳仁天皇の皇権
第5章 仲麻呂政権の確立―官位官職をきわむ
第6章 仲麻呂政権の政策と政治―独自な施策
第7章 仲麻呂政権の動揺―淳仁天皇の帝権分離
第8章 藤原仲麻呂の乱―乱の経緯と意味
著者等紹介
木本好信[キモトヨシノブ]
1950年兵庫県生まれ。1978年駒澤大学大学院人文科学研究科日本史学専攻博士後期課程満期退学。現在、甲子園短期大学学長、博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パパ
2
藤原仲麻呂の乱は、孝謙上皇が仲麻呂、淳仁政権に対して起こしたクーデターであった。聖武天皇、光明皇后から大炊王と天皇大権(鈴印)が受け継がれており、淡路廃帝には実権がなかったというのは誤りというのが定説らしい。 不比等の妻の県犬養橘三千代のように、仲麻呂の妻、袁比良が仲麻呂の権力の鍵を握っているような気がする。2024/07/26
鈴木貴博
1
藤原仲麻呂。嫡流であった藤原南家に生まれ、叔母光明皇后の後ろ盾の元台頭し、政敵を倒して正一位・太師(太政大臣)まで上りつめ権勢をふるうが、孝謙太上天皇から反逆者として討伐され琵琶湖畔で斬首されるという末路をたどった。先入観を排してその権力への道、実施した各種政策を詳しく論じ、また孝謙太上天皇、淳仁天皇との関係を再検討し、「藤原仲麻呂の乱」という見方に疑問を呈する。孝謙太上天皇による“帝権分離宣言”以降の権力の所在の再検討、孝謙と仲麻呂の権力闘争という形での“仲麻呂の乱”の再構成が非常に面白く、腑に落ちた。2018/09/06