内容説明
日本文化を一身に背負い、「昭和」に殉じた作家の素顔。
目次
序章 三島由紀夫の人生は「和歌」だった
第1章 天才の生い立ち―あれは可哀相な人間でございました
第2章 学習院という湖―傑作の種の数々は学習院で芽生えた
第3章 二人の西欧的知性―『仮面の告白』と「豊饒の海」の背景
第4章 住まいの履歴書―絢爛たる草庵を打ち破る
第5章 日本文化と戦った三島由紀夫―人間は誰のために死ねるか
第6章 命を賭けたライフワーク―『源氏物語』を超えて
第7章 自決の朝―人生の大団円
おわりに―三島由紀夫という謎
著者等紹介
島内景二[シマウチケイジ]
1955年長崎県生まれ。1979年東京大学文学部国文科卒業。1984年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。現在、電気通信大学情報理工学部教授(日本文学専攻)。博士(文学)(東京大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゴールドまであと882日
20
若い頃には、よく読んだ。45歳過ぎたら、男は生きる価値がない、天皇制礼讃、市ヶ谷でのクーデター演説・割腹などショッキングな小説家ではあった。あのインパクトがなければ、これほど記憶に残るかなとも思う。古いタイプの小説家が減り、いまどれだけ小説家が社会に影響しているか、ある意味、小説家が多すぎるのかも。単なる暇つぶしか、昔は、どうだったのか。小説家、すごい教養の持ち主もいる。小説にそれがでている。混沌とした状況、三島は、よく読み、よく思い、よく動いた小説家ではあった。若い頃に読んだけれど、その後、ない。2022/03/08
みを
1
源氏物語研究者が上梓した三島由紀夫の評伝。古典文学研究者らしい視点で、三島文学の根幹には、和歌における「本歌取り」と「掛詞」が大きくかかわっていることを見抜いた力作。やや牽強付会な部分を感じるものの、幼き日から古典文学に親しみ、「本歌取り」と「掛詞」を体得したうえで自身の作品を編み上げた三島、というイメージが一貫しているため、読み進めるうえで迷子になることはない。ただ、「おわりに」に描ききれなかった部分も多いと記しているように、三島における「若さ」についての論評があれば、なお深みが増したように思う。2025/05/25