内容説明
高い離婚率と私生子たちの嘆き。許婚や婿養子の多さと内縁者の苦しみ。貧しさに追われながらも、自由恋愛主義と「家」制度のはざまに揺れた、大正時代のさまざまな家族の暮らしを浮き彫りにする。最近では、「昔の家族は良かった」という論調が盛んだが、それはかなり幻想に近い。本書では、多方面の資料から実態を検討し、これまでにない大正期の家族像の矛盾に迫る。
目次
第1部 自由と抑圧の到来―大正前期を中心に(きびしい時代背景と変わり目;自由恋愛事件の頻発;新聞家庭相談の流行;下層家族の生活;農家と新中間層にみる女性の暮らし)
第2部 新たな家族の姿と格差―大正後期を中心に(柳原白蓮事件をめぐる波紋;家族紛争と法との食い違い;国勢調査が示す家族像;新しい家族観のめばえ;大衆文化と家族の格差)
自由と抑圧のなかで
著者等紹介
湯沢雍彦[ユザワヤスヒコ]
1930年東京都生まれ。東京都立大学人文学部社会学専攻・同法学専攻卒業。東京家庭裁判所調査官、お茶の水女子大学教授、郡山女子大学教授、東洋英和女学院大学教授を経て、お茶の水女子大学名誉教授、養子と里親を考える会理事、地域社会研究所理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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midnightbluesky
4
考察から受けた印象は、大正期と今現在が大変酷似しているということ。特に労働者の生活に困窮し、日々の労働に追われ余暇の楽しみがない、というところなど。じゃぁ、このまま戦争に突き進むのか?という不安に駆られてしまうぐらい似ているのではないのか?と思った。2012/02/17
takao
2
ふむ2023/12/10
MIRACLE
1
大正時代の約15年の、日本の家族問題(紛争・状況・結婚離婚などの諸行動)について、広い立場から、検討を試みた本。二部構成で、第一部で大正前期、第二部で大正後期をあつかっている。この時代の日本は、国民皆婚(国民の98%が結婚を経験)であり、離婚率が減少(1.13~0.87。現在の2分の1以下)していた。明治の終焉は解放感をもたらしたが、ずっと不況だった。そのため、女性が離婚して一人で暮す余裕などなかった。戦前日本の家族問題は、女性が無権利の状態にあった、ということが、すべてだと思う(子の親権すらなかった)。2013/12/28
Arte
1
原敬が国民を鼓舞しようと、先進6ヶ国の中で何か日本が一番なものを探しなさい、と命じたら、一位なのは私生児の数と離婚率だけだった、というのが面白い。あと、田舎以外では意外に三世代同居が少ない(年寄りが早く死ぬから)とか、民主主義の機運が非常に高まっていたとか。長野の山奥の村で、1家族30人ぐらいなんだけど、男で妻がいるのは当主だけで、あとは当主の親族と、女性親族の子供だけで一家が成り立っている(結婚にはお金がいるので、当主以外は結婚せず、事実婚で生まれた子供は女性側で育てられる)というのも興味深い。2012/08/09