内容説明
歌舞伎界の名優・中村雅楽が殺人事件の謎に挑む。シリーズ唯一の密室ものにして雅楽最初の事件「密室の鎧」をはじめ、演劇界内外を騒がせる怪事件に、チャーミングな老優の推理が冴える。シャーロック・ホームズと半七捕物帳、双方の系譜を継ぐ傑作シリーズから8篇を精選。デビュー作「車引殺人事件」の幻の原型作品も書籍初収録。
著者等紹介
戸板康二[トイタヤスジ]
1915(大正4)年、東京に生まれる。慶應義塾大学国文科卒業後、『日本演劇』編集長時代から歌舞伎評論を発表し、その方面の業績により戸川秋骨賞、芸能選奨文部大臣賞などを受賞。江戸川乱歩のすすめでミステリーの執筆を開始する。1958年に発表した「車引殺人事件」の好評を受け、中村雅楽シリーズを数多く執筆。1959年「團十郎切腹事件」で直木賞、1976年「グリーン車の子供」で日本推理作家協会賞を受賞。1993(平成5)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
geshi
29
歌舞伎をはじめとする芸能の世界の特殊な空気は隔絶の感があるが、しっかりした本格推理のつくりの堅実さと好奇心旺盛でチャーミングな中村雅楽のキャラクターによって面白く読める、さすがは名シリーズ。『等々力座殺人事件』あの名作を歌舞伎の世界でオマージュした挑戦。『臨時停留所』ホームズ的な推理の面白さ。停留所の使い所が巧いなぁ。『美少年の死』普通なら理解しがたいホワイダニットに雅楽が一片の共感を差し向けることで閉じる物語。『ラスト・シーン』推理小説の本道でありつつ意外な犯人を見事にやってのけたな。2024/01/12
宇宙猫
17
挫折。古びた感じはしないけど、好みじゃなかったので1話で挫折。2024/07/02
スプリント
8
時代を感じさせず謎解きの過程を楽しめました。2024/08/21
つきみ
7
1969年に直木賞を受賞なさっているというのに、恥ずかしながら初耳の作家さんでした。歌舞伎のことはほとんど分からないけれど充分に楽しめる作品ばかり。情報にあふれた時代に生きる私にとって謎解きはおまけの要素で、世界観を楽しむだけで大満足。「楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎」も早速買いました!2024/01/25
SOLVEIG
5
ホームズ役の歌舞伎役者とワトソン役の新聞記者のコンビが活躍するプチミステリというところかな。劇場や舞台に関する描写も色々出てきてニヤニヤしつつ面白く読了。大正生まれの作家さんの作品だけれど、そんなに古さは感じなかった――とはいえさすがに「時代だなあと」思うところもあるにはあるけれど。 特に印象的だったのは劇場・舞台からは離れたエピソードの中で『滝に誘う女』『臨時停留所』。にしても、この雅楽というキャラ、面白い。しばらく《雅楽》って文字を「ががく」と読むか「がらく」と読むか一瞬迷いそうだな……!?などと。2024/01/23