内容説明
コーヒーは石油につぐ巨大市場を形成する一次産品であると同時に、グローバル化時代の南北問題を鮮やかに象徴する農業生産品でもある。多様な意味を内包するコーヒーの歴史を文脈化して整理し、「コーヒーで結ばれた世界」を見渡すための歴史的視座を明示する、刺激にみちたグローバル・ヒストリーの試み。
目次
世界を魅了するコーヒー
第1部 コーヒーから見た人の歴史と社会(歴史をめぐるコーヒーの旅―アフリカからラテンアメリカへ;輸出農産品としてのコーヒーとその特色)
第2部 コーヒーとラテンアメリカの近代化(ブラジル―他を圧倒する世界最大のコーヒー生産国;コスタリカ―品質で勝負する中米の老舗コーヒー生産国;コロンビア―世界に名高い最大のマイルド・コーヒー生産国)
第3部 コーヒー消費国の諸相(アメリカ―世界のコーヒー流通を仕切る最大のコーヒー消費国;日本―アジア随一のコーヒー消費国の歴史とその特色)
著者等紹介
小澤卓也[オザワタクヤ]
1966年東京都生まれ。1998年立命館大学大学院文学研究科博士後期課程修了。立命館大学博士(文学)。現在、大阪学院大学、京都産業大学、神戸女学院大学、立命館大学、龍谷大学、各非常勤講師。専門はラテンアメリカ近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
73
部分読みしていたものを通読。原油に次ぐ国際取引が行われているコーヒーについて、生産側(主に中南米)と消費側(主に米日)の諸事情を説明する。特にブラジル・コスタリカ・コロンビアの異なる生産体制の構築と政治の関わりの対比は、グァテマラやニカラグアを加え多面的かつ立体的にその様子を見ることができた。しかもそこにはアメリカ、ドイツの多国籍企業の関わりが示され、中南米各国のコーヒー支配層と多国籍企業の関わりや利益分割の様相もうかがい知れた(ただしその分析はやや物足りないが)。ベトナムの動きもあったが少々物足りない。2023/08/21
浅香山三郎
15
モノとしてのコーヒーの生産体制、種別、流通、消費、宣伝戦略の諸側面から、中南米、アメリカ、日本の近現代史を描き、世界システムの構造の中に位置付ける。コーヒーの栽培環境(地理的条件)や、豆の種類、加工の手法等が、生産国の社会構造にまで影響するといふモノカルチャーのありやうを丁寧に叙述してをり、示唆に富む。アメリカのコーヒー販売に於ける宣伝戦略の話も、アメリカの消費資本主義の性格を具現化したもので、資本主義の世界システムの多面性が凝縮されてゐる。2019/09/23
柳瀬敬二
8
バナナ然り、グローバルな作物は業が深い。この本では、コーヒーを軸に南北アメリカの歴史を辿っていく。そこには、アフリカから持ち込まれたコーヒーを、どのように生産し、どのように消費者に販売するか、各国の様々な思惑が複雑に絡み合う様が描かれている。これ一冊でコーヒーに関するかなりの知識をカバーできるのではないだろうか。個人的に楽しめたのは各々の時代における広告だ。嗜好品としての性格が強いコーヒーは、良いイメージを消費者に植え付けるために、時に健康的で時に愛国的であり、歴史とともにその姿を変えてきた。2015/05/25
疾風
3
現在、コーヒーは石油に次ぐ巨大市場を形成していると言われている。あくまで嗜好品であり、決して生活必需品とは呼べない代物なのに、どうしてこれほどまでに多くの人に愛されているのか。そんな不思議な飲み物「コーヒー」をめぐる世界史とグローバル問題を紐解いていく1冊。 2020/05/30
どらぽん
2
あまり知らなかった中南米の国の歴史を詳細に解説してくれるのだが、コーヒーの影響の強さを絡めて語ってくれるのでわかりやすく興味深く読めた。 歴史を知っているアメリカも中南米の歴史を踏まえたり、コーヒーの視点から見ると別の見え方をするのも新鮮で良かった。 現代の問題の解説はあまりなく、そこに潜む背景を知ることで問題への理解が深まっていくという本だった。2022/08/08