内容説明
アイビー・リーグで語られる嘉仁の時代、二十世紀日本の「原点」。治世の期間が比較的短く、健康状態が芳しくなかったことから悲運の生涯と語られることの多い大正天皇。20世紀初頭という「近代の起点」に生きた歴史的意味、さらに日本の近代化へ及ぼした影響はいかなるものか、世界史的文脈から光を当てる。
目次
第1章 病弱な天皇か
第2章 日本の西洋化とともに
第3章 行啓に見る近代日本
第4章 二〇世紀近代国家の天皇
第5章 「平和日本」の象徴
第6章 忘れ去られる大正天皇
終章 歴史のなかの大正天皇
著者等紹介
ディキンソン,フレドリック・R.[ディキンソン,フレドリックR.][Dickinson,Frederick R.]
1961年東京に生まれる。1986年京都大学大学院法学研究科修士課程修了。1993年エール大学大学院歴史学研究科博士課程満期退学。博士(歴史学)。現在、ペンシルヴァニア大学大学院歴史学研究科・歴史学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
15
病弱で暗愚と言われた大正天皇に、積極的に光を与える著者。明治天皇と比べ、開かれた皇室を目指し、近代日本を切り開いた象徴と全面的に肯定している。異国の著者がなぜそこまで宣揚してくれるのかと申し訳ない限りだが、贔屓の引き倒しである。時代が下るにつれ現代化されるのは当然であり、その世情が皇室に反映されたというに過ぎない。2019/06/16
ジュンジュン
13
著者は言う、伝記とは個人の性格ではなく、時代の性格すなわち歴史的意義も浮かび上がらせなければならないと。原武史氏と古川隆久氏が、ミクロの視点で"病弱"を重視したのに対し、本書はマクロの視点から、時代の"象徴性"を論ずる。世界史的視点(特にヨーロッパ王室)から見れば、大正こそ近代のスタンダードであり、それを象徴するのが大正天皇その人であると。明治、昭和(戦前)に比べて陰が薄いのは、現代日本(象徴天皇制)に完全に密着融合しているから。納得できるかは別にして、日本人にはなかなか持ち得ない面白い視点ではある。2021/04/07
バルジ
4
大正天皇個人評伝というより近代日本における「大正天皇」の象徴的存在にスポットをあてている。大正天皇個人への同時代人の評価が殆ど記載されておらず、当時の為政者達がどういう眼差しで評価していたのかが不明なのは惜しいところ。しかし本書の最大の価値は同時代の欧州諸国と比較した上で近代日本の天皇制をその欧州水準まで高めたという、現在の象徴天皇制へと繋がる論点を描き出している点であろう。幕末に生まれあくまで保守的だった「明治大帝」と比べ大正天皇はフランス語を学び世界へ強い関心を抱く「開かれた」君主だった。2020/07/06
SK
2
230*大正天皇3冊目。天皇を、ひとりの人間というよりも、機能として見ている。こちらは、必要以上に大正天皇を持ち上げ過ぎ。2018/09/30
そーだ
2
大正天皇に対する誤解や偏見が改まる優れた本。しかし、その記述はより正確であろうとするためか、どこか暖かみがないように思う。2012/11/13