Minerva歴史・文化ライブラリー
視線は人を殺すか―小説論11講

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  • サイズ B6判/ページ数 206p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784623050710
  • NDC分類 902.3
  • Cコード C3395

内容説明

点と点を結ぶ直線としての「視線」は、目には見えず、粒子に分解できるような物質性を持たない。しかし視線は、決して実体のない泡沫ではない。それは、人の心の秘密を暴き、人をある行動へと誘い、人と人とを結びつけたり引き離したりし、人を脅かし、錯誤に陥らせ、果てはその命までも奪う。視線とは、人間相互の関係に絶大な力を及ぼす非言語的媒体と言えよう。本書は、東西の近現代小説二六編を、さまざまな「視線」に焦点を合わせて読み解く「視線」小説論11講。

目次

第1章 恋を見破る
第2章 誘発する視線
第3章 結晶作用
第4章 離反作用
第5章 一方通行の視線
第6章 覗き見
第7章 脅かす視線
第8章 錯覚
第9章 遮断された視線
第10章 子供の視線
第11章 視線のミステリー

著者等紹介

廣野由美子[ヒロノユミコ]
1958年大阪府に生まれる。イギリス小説を研究。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。著書『十九世紀イギリス小説の技法』(福原賞受賞/英宝社、1996年)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

つーこ

36
『視線』と一括りにしても、恋に落ちる・錯覚・覗き見・犯罪などテーマは様々。オースティンやディケンズ、ポーなどハードルの高いイギリス古典小説を解りやすくあらすじを織り交ぜながら『視線』の持つ影響が説明されていく。中でも一番興味深かったのは子供の視線。『大いなる遺産』『メイジーの知ったこと』はどちらもとても有名だが、子供の目線を通して大人が語られ、子供が故に幻想や底の浅い勘違いがある。それはつまり、それに気づく我々(読み手)大人が失った物であることに他ならない。なるほど!と作品への興味も掻き立ててくれた。2023/10/04

rinakko

10
再読。目には見えない「出来事」としての視線、という切り口にぐっとくる。視線が人に及ぼす作用やその心理的影響について。人間を描くうえで、小説は視線という要素をいかなる戦略として用いているか。初読時には未読だった作品を先に読んでおいたので(『虚栄の市』とか)、ますます面白かった。2022/07/21

rinakko

10
まずは“視線”という切り口自体が私には盲点で、ぐっと掴まれた。それは目に見えない出来事でありつつ、投げかける側にも投げかけられる側にも心理的作用を及ぼし、相互関係の変化のきっかけともなり得る。では小説において人間が描かれるとき、視線はいかなる戦略として用いられるか…という考察が、馴染み深い作品を中心に繰り広げられる。恋を見破る視線、覗き見、錯覚、誘発、脅かし…。最近読んだ『ヴィレット』の章や、『ヴェニスに死す』『高慢と偏見』『緋文字』『レベッカ』『グレート・ギャツビー』『春琴抄』などなど、頗る面白かった。2019/09/09

白黒豆黄昏ぞんび

9
各章のテーマをサラッと考察しているわりには深い内容でした。視線はごまかしのきかない、意識と無意識の間のようなものを表出させるのですね。そして様々な力学が働き、時には人を死に追いやったりもする、ある面では恐ろしいものです。有名な文学作品が引用されていたのですが、有名すぎて手が出せなかった小説やなんか、一層興味が湧いたので少しずつ読んでいこうと思いますた。日本からも3作品。2013/02/22

nranjen

6
再読。ものすごく面白い。「視線」という着眼点も良いし、論述も本当にうまい!!と感嘆しながら読んでいました。2021/01/18

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