内容説明
逃亡奴隷セサが幼い娘を殺した真意とは―。奴隷制の歴史を背景に、アメリカ黒人の愛と苦悩を描く『Beloved』の魅力に迫る。二一世紀に生きる自覚を持つ研究者や作家としてのパースペクティヴの中で、アフリカ系アメリカ人の歴史と文化の土壌から産まれた作品の個性と普遍性がつまびらかに論じられている。
目次
1 トニ・モリスンの世界(自己の創造と文学―トニ・モリスンの軌跡;時を超える記憶・死に挑む愛―現代の古典『ビラヴィド』の様々な読み)
2 過去と向き合うこと・未来を拓くこと―『ビラヴィド』と呼応する作品群(先祖と向き合う姿勢―『ビラヴィド』とカリブ系アフロ・アメリカ作家;「わたしは背中に木を生やしている」―トニ・モリスンとアリス・ウォーカー;赤人と黒人の絆―了解と交流;モリスンとフォークナー)
3 文化の交差点で―二一世紀に読む『ビラヴィド』(ビラヴィドは世界の形象なのか―『ジャズ』、『パラダイス』、『ラヴ』から読み直す『ビラヴィド』;善意の崩壊と再記憶―『ビラヴィド』と『みんなが知ってる世界』;近代と対峙するコスモロジー―モリスンと石牟礼道子の世界)
4 文化・歴史・個人(ビラヴィドはなぜ黒いドレスで現れたか;奴隷体験記が残した空白―トニ・モリスン『ビラヴィド』を語る;愛という罪―『ビラヴィド』に寄せて)
著者等紹介
吉田廸子[ヨシダミチコ]
青山学院大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コニコ@共楽
15
『ビラヴド』をもっとよく知りたいと思い、手に取りました。いろいろな見地から考察している中で、5章「赤人と黒人の絆」は俊逸。ポールDの例に挙げて、2つの民族の故郷喪失を語っている点が印象的でした。6章「モリスンとフォークナー」も、モリスンがフォークナーができなかった”語りえない記憶”を物語として語る方法に踏み込んで作品にしていったことも説得力のある文章でした。最終章の「奴隷体験記が残した空白」は、モリスンのインタビューも含めて読み応えのある文学的価値のあるものでした。『ビラヴド』の世界観を垣間見た思いです。2021/12/27
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