内容説明
田沼意次、江戸中期の幕臣。将軍小姓から幕府老中へ、六〇〇石の旗本から五万七〇〇〇石の大名へ異例の出世を遂げ、十八世紀後半に大胆な経済政策を展開した田沼意次。賄賂汚職の悪徳政治家か、清廉潔白な開明的政治家か。毀誉褒貶の激しい意次の実像は、いかなるものか。
目次
第1章 権力掌握の道のり(田沼家の歴史;田沼意次の経歴―将軍家重の代;田沼意次の経歴―将軍家治の代;出世と権勢の理由;田沼意次の人脈・党派の形成;幕府権力の掌握)
第2章 利益追求型の政治―意次の政治(田沼時代の幕府財政;御益追求と山師の時代;意次と源内・藍水;興利策の追求;幕府利益中心主義)
第3章 幕府全権掌握期の政治(下総印旛沼の干拓工事;ロシア交易と蝦夷地の開発;両替商役金の問題;幕藩財政と御用金;幕府銀行設立の構想)
第4章 田沼意次の素顔(意次は清廉潔白か;江戸時代の賄賂と意次;意次の素顔と世相;相良藩田沼家の素顔)
第5章 田沼時代の終焉(田沼意知の横死;田沼意次の失脚;田沼意次の処罰;波瀾の生涯を振り返って)
著者等紹介
藤田覚[フジタサトル]
1946年長野県生まれ。千葉大学文理学部卒、東北大学大学院文学研究科博士課程中退。東京大学史料編纂所助手、助教授、教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
20
田沼意次の評伝。彼の行った改革やその背景にある時代相などを手堅くまとめている。幕府の財政再建という喫緊の課題に対して、投機的な政策をなりふり構わず遂行するが、その失敗の責も彼一人が負わされることになる。よく言えば能吏、悪く言えば小役人というか、職務には精励するが大きなヴィジョンのようなものは無く、開明的な改革派政治家という最近流行りの田沼像もまた違うような…と思う。慇懃な態度、律義者という評価、目下の者に対する厚意など真面目さと卑屈さが同居するあたりが、一代で成り上がった者を象徴しているようにも見える。2024/12/18
スプリント
9
評価が難しい政治家の一人。 成り上がったゆえに縁故関係の構築に勤しんだとも言える。 天災が重なり不運な面も。 蝦夷開拓や印旛沼開拓がうまく行っていたらどんな時代を迎えていたのだろうか。2025/01/19
鯖
4
佐伯泰英さんの文庫時代劇、割と好きで昔いっぱい読んでたんすけど、ラスボスだいたい田沼じゃないですか。いつまで田沼ラスボスにしとくんだよ~ってなって、そこがイマイチだったんだよね。平清盛しかり日本人は米以外を経済改革の中心にもってくる人を嫌いがち。ロシアとの貿易、蝦夷印旛沼開発に加え、民から広く薄く資金を集め、大名に融資する幕府銀行とかいいな~。利息7パー幕府への上納金1パーの御用金政策にぶうぶう文句言ってた江戸時代のみなさんに今の銀行の利率教えてさしあげたい。広く厚く濃くで死にそうなんですけどマジで。2025/02/12
しそゆかりうめこ
3
栄花物語を読んでから田沼さんが気になり頭から離れなくなったので借りてきた。評伝と言うのは初めて読んだけど、公平さや丁寧な説明、説明の中にも書き手の温かさを感じられる文面がとても良かった。無知すぎて一々びっくりする事が書いてあり面白かった。当たり前だけど時代背景や立場、人をひとくちに善人か悪人かを判断することは出来ない。全ての人に色んなことを配慮して理解するのはすごく難しい。知りたい事はたくさんあるけどそれも単純に、私にとって理解が難しい。2022/03/31
wuhujiang
3
田沼が政治を主導した「田沼時代」は「利益追求型」の政治であったと説く。 幕府にはとにかく金がなく、年貢による収益増も限界に達していたので、幕府財政を立てなおすのは喫緊の課題であった。 田沼は上記の課題に対し、利益になる政策をかたっぱしから追求した。結果、社会も利益を追い求める「山師」的な風潮になってしまった。 一方、田沼意次自身はプラスの評価が多い ・将軍家重の「律儀もの」という評価 ・上にも下にも過剰なほど慇懃 ・遺訓等にみられる家臣への厚情 など2020/02/01