内容説明
人間にとって、食べるとは何か?本書はイギリス小説に描かれた“食”を手がかりとして、イギリスの文化・歴史の理解に迫る一方で、具体的な食の風景の描写を通じて、登場人物たちの人間像をより深く読み取ることを目指した。華やかなディナー、ささやかなお茶の時間、美しい食器たち…。食というきわめて日常的な営みの持つ意味の奥行きを多様な視点から考察する。
目次
1 食への歴史的な視線(ティー・テーブルの快楽―茶の英文学史事始;食器という表象―小説にみるイギリス陶磁史;ディナーは何時にとるべきか―食事の時間と階級意識 ほか)
2 作品に見る料理と食卓(チャールズ・ラムと子豚;ガチョウの雛鳥、キジ、七面鳥、そしてレベッカのプディング―『マンスフィールド・パーク』における“食”の表象;ブロンテ家の食卓は―素ときどき贅 ほか)
3 食と生き方の探求(ジョイスの文学における認識と欲求の問題―偏食という麻痺をめぐって;サバイバルと食―ロビンソン・クルーソーとその子孫たち;農村の文学にみる“食”の諸相―ハーディ、ジェファリーズの小説の食風景 ほか)
著者等紹介
安達まみ[アダチマミ]
1956年生まれ。聖心女子大学文学部助教授
中川僚子[ナカガワトモコ]
1957年生まれ。大東文化大学経済学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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Koning
38
衣食住で読むイギリス小説3部作のその2。衣装はうーんという感じが強かったんだけど、これは個人的に大当たり(笑)。当然ながらお茶と茶器というかテーブルウェアにもがっつり章を割いているし、各論文ごとに著者のノリが違うんだけど、食べることに関しては結構皆さんノリノリな感じがよござんす(笑)。チャールズ・ラムと子豚を論じた南條の論文は民明書房的何かを思い出させてくれて特にニヤニヤが止まらなかった(笑)。2015/10/21
viola
9
衣食住シリーズ第2弾。 食の観点から見た文学研究書は数多くあれど、これは特に面白いと思います・・・・!執筆者陣も豪華だし、比較的有名な文学作品を取り扱っているために専門書とはいえ、かなり読みやすいです。特にディケンズやオースティン、ブロンテ姉妹ファンは楽しめるのではないでしょうか。衣裳→インテリアと読んでいくつもりです。2011/02/15
tom
7
文化の多様性は、とても面白い。「食」は、文化のベースだから、これを「小説」とからめたら、面白い考察が現れると思って借りてきた。一方で、イギリスの食い物は不味いという話をよく聞く。実際のところ、いまだにかなり凄いという話を、つい最近、聞くことがあった。肉なんて、匂い消しの香草を乗っけて、焼くだけらしい。こういうところから、食に対するイギリス人の嗜好性がどのように表現されているのかという関心から読み始めた。で、ちょっとばかり残念本。面白かったのは、ディーネッセンの章だけど、この人イギリス人じゃないよね。2014/03/24
きりぱい
5
イギリス文学と食に関する話題が好き、という前提があってのことかもしれないけれど、なかなか面白い1冊。小説の食の描写を拾って、その背後にあるものや、象徴となる時代や階級、人物像までも考察する。取り上げられるのは、ギャスケル夫人やブロンテ姉妹、オースティン、ディケンズ、ルイス・キャロルなど、他にもなじみのある作家が多数。お茶の項でのどが渇き、焼豚の項でのどを鳴らし、晩餐には遠い目と、美味い不味い交えて、改めて物語を想起する楽しさがある。2009/06/06
蒼深
3
生死に重きを置くのなら、食もまた同じように真摯に語られなければならない。動物や植物を育て、殺し、届けてくれる人のことも。ところでいまだプディングというものを食べたことがない。イギリスまで行かずともいつか本場のと語られるプディングを食べてみたい。2016/04/28
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