出版社内容情報
「本書で生き生きと語られる人間のイタチごっこは、とても楽しいだけでなく、経済学の多くの基礎を、巧みに明らかにしている」
ジョージ・アカロフ(UCバークレー教授、2001年ノーベル経済学賞受賞)
「本書は不可能を可能にしている。保険を楽しくするなんて! 面白い保険本を想像してみてほしい。受け合うが、本書はその3倍は楽しい。教科書なんか捨てて、経済学は本書で学ぶべきだ!」
スティーブン・レヴィット(シカゴ大学教授、『ヤバい経済学』)
(プロローグより)
「大半の人は、そもそも保険について何も考えていない…保険のことが頭に浮かぶとしたら、それは自動車保険の請求書が届いて、「げっ、なんて高いんだ!」と驚愕したり、病院の請求書の封を開けて、誰かが費用を補償してくれたと知って安堵したりしたときだけだ。…
保険が人々の暮らしに重要な意味を持つのはどんな状況か…保険が然るべき仕事をしているときは、危険に満ちた世界で、救済の手段を授けてくれる。…ただし、そこには落とし穴もある。保険商品には、保険市場を謎にする特徴がある。それが〈選択問題〉と呼ばれる、この本のテーマだ。
選択問題があることで、追いつ追われつのゲームが始まる。保険会社は然るべき顧客を選ぼうと(困った顧客は避けようと)努力するが、「困った」タイプの顧客もまた、自分たちは然るべき顧客だと保険会社に信じてもらおうとあらゆることをする。
この知恵と情報の勝負で誰が優位に立つのか。それを知りたければ、この本を読んでいただきたい。…
この本を読み終えたとき、読者の皆さんをつねに悩ませてきた、この世界の諸々のことが、もっと腑に落ちるものになっていたら幸いだ」
なぜペット保険は高額なのか? なぜ離婚保険は存在しないのか? 保険につきまとう〈選択問題〉から、経済学の原理に迫る。
【目次】
プロローグ 保険は茶色の靴下ではない
I 下準備
1 市場の死
保険市場の死
自然には機能しない市場
保険のある世界とない世界
大きなビジネスと大きな政治
どんな未来が待っているか
2 荒野へ
消えた市場
恋の行方
大小あらゆる生き物のための高額な保険(ただし15歳のダックスフントは除く)
保険市場が消滅しない理由
ハーバード版恋の行方――逸話から証拠まで
あなたが知らないことを私は知っている――生命保険の場合
ウディ・ガスリーと遺伝子検査と保険研究――あるアメリカの民話
3 2000年の歴史を持つ市場
私は永遠に生きるだろう
現代に戻って
そう、バージニア、選択は本当にあるのです
II 選択の空騒ぎ
4 然るべき価格ではない
良い情報で保険市場を救済する
コーヒーハウスからコンピュータへ
それで機能するのか
どんな価格でも保険に入れない
内緒にしておけ
持っている情報を使用しない選択
その価格は不公平だ!
ブラックボックスのなかの何が重要か
無知のヴェールの裏で
5 秘密の小部屋を開ける
顧客に自らの正体を明かさせる
顧客が嫌がる商品を作る
待機期間
良い顧客を囲い込む
保険の事前契約
III 政府の保険に登録する
6 ブロッコリーを食べなさい!
義務化の強制
集団の強制
「止まれ! さもないと……もう一度「止まれ!」と言うぞ」
保険のゴルディロックス問題
最も助けを必要としない人を助ける
理論に本領を発揮させる……や否や
7 よくもそんなことが!
23アンドミー社で起きることは23アンドミー社にとどまるか
二兎追うものは一兎も得ず
誤解
8 企業が最後の一手を打つ
もぐら叩き問題
保険業者のメリット
もぐら叩きのハイテク化
エピローグ 選択市場は至る所に存在する
教育の価値
解雇レイオフとレモン
自分の金でプレイする
謝辞
索引
原注