出版社内容情報
内容説明
小説を読みはじめた子ども時代、音楽に夢中でうまく本が読めなかった青年期から、本を作り、仕事と子育てのあいまに毎日の読書を続ける現在まで。吉祥寺のひとり出版社「夏葉社」を創業し、文学をこよなく愛する著者が、これまで本と過ごした生活と、いくつかの忘れがたい瞬間について考え、描いた37篇のエッセイ。本に対する憧れと、こころの疲れ。ようやく薄い文庫本が読めた喜び。小説家から学んだ、長篇を読むコツ。やるせない感情を励ました文体の力。仕事仲間の愛読書に感じた、こころの震え。子育て中に幾度も開いた、大切な本…。本について語る、あるいは論じるだけではなく、読むひとの時間に寄り添い、振り返ってともに考える、無二の散文集。
目次
本を読むまで(本を読むまで;大きな書棚から;家に帰れば ほか)
本と仕事(『言葉と物』;『なしくずしの死』;『ユリシーズ』がもたらすもの ほか)
本と家族(リーダブルということ;『アンネの日記』;『彼女は頭が悪いから』 ほか)
著者等紹介
島田潤一郎[シマダジュンイチロウ]
1976年高知県生まれ、東京育ち。日本大学商学部会計学科卒業。アルバイトや派遣社員をしながら小説家を目指す。2009年、出版社「夏葉社」をひとりで設立。「何度も、読み返される本を。」という理念のもと、文学を中心とした出版活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
149
ひとり出版社「夏葉社」を創業した著者の、本に対する深い愛情が、人生の思い出とともに語られる。思わず納得する文章に出会う:「いやなことがあったり、絶望しているときの方が本が読める」「初めてドストエフスキーの本を手に取った時に驚いたのは、難解な語彙が出てこないことだった。「あ、僕にも読める!」そう感じたときの喜びが忘れられない」…。アルバイトに応募してきた人に「時給は○○。交通費は出せません。でも毎月1万円までなら本代を出します」と言う島田さん。温かくて少し悲しいエッセイの数々。みすず書房さんらしいいい本だ。2024/05/16
アキ
105
2009年にひとり出版社を立ち上げた著者のエッセイ。表紙の絵画は、1916年グスタフ・クリムトが描いた「シェーンブルン庭園風景」。本を読むこと、読んだ本のこと、そして文芸にまつわる仲間や先輩とのこと、すべては些細なことであり、本人でしか記憶していないこと。大学の授業で週に一度だけ一緒になる長い髪の彼女のことが忘れられない。偶然、朝方ジャージ姿てゴミ出ししている彼女をほんの一瞬だけ見た。名前も知らない彼女の姿は今も心の中にある。文学とは、そんな些細なことをひとつ残らず文章にして表現することなのではないか。2024/06/30
fwhd8325
105
とても素晴らしいエッセイ集でした。発売された頃、出版関係の方々からの賛同がよくわかりました。「読書とは」と問われたら、まずこの著書を薦めるかもしれません。成熟した果実のようなものだと感じました。2024/06/11
どんぐり
95
ひとり出版社「夏葉社」代表の読書をめぐるエッセイ。〈本を読むまで〉〈本と仕事〉〈本と家族〉の3章からなる37編。立ち食いそば屋で読むプルーストに源氏物語。「1年間、本だけを読ませてほしい」と親に頼み込むかつての島田青年も出てくる。ほぼ通勤電車の中が読書時間。自分もその口だが、「長い読書」の一篇に膝を打つ。義父の家に介護に向かう電車に乗って、「いつもより本が読めるからうれしいんだよ」と言って妻に答える。→2025/04/16
ナミのママ
90
年代も暮らした土地も違うのに「あるある」と既視感を覚えてしまう、これはそんな作品だ。ひとり出版社「夏葉社」を経営する島田さんの長いつぶやきにも似たエッセイはなぜか共鳴する部分が多い。この匂い覚えてる、同じような葛藤を抱えた時期があった。読み進めるたびに本を伏せて目を瞑り自分の過去に跳んだ。そうやって読み終えると島田さんと言う人物が浮かび上がり、まるで友人のように感じられる。出版社から6刷が決まったと聞いたこの作品、確かにこれは静かに広がって欲しい本。(サイン本)2024/09/26