出版社内容情報
エリザベス朝イングランドの詩人ジョン・ダンは「どの人間も孤島ではない」と謳った。ギンズブルグはこれを「どの島も孤島ではない」と読み替え、海洋帝国をなした島国・イギリス文学の異種混交性を四つの世界的パースペクティヴのもとでえがく。
スペイン人司教がトマス・モアの『ユートピア』=「どこにもない場所」をつくろうとしてメキシコに建設した救貧院。
16世紀の英語韻文をめぐるテクニカルな論争が、イギリス人のアイデンティティ構築にいかに深くかかわったか。
近代小説の起源を語るさいに欠かせないスターン『トリストラム・シャンディ』がフランスの思想家ピエール・ベールの『歴史批評辞典』と形態学的に類似し、気まぐれにくねくねと進行する意味。
人類学者マリノフスキが西洋の経済原理では理解できない交換制度「クラ」を南洋で見いだす発想源になったスティーヴンソンの小説「壜の小鬼」と、満月の夜のプラトン的体験。
著者はサバトのフォークロア的根源にかんする研究『夜の歴史』の刊行以降、真実に接近するべく試みを重ねて紆余曲折する《エッセイ》という形式を採用しながら、文献学的論考を発表してきた。本書では文学を対象に「読むことと書くことの関係』を追う。
内容説明
イギリス文学は異種混交。人がどう書物を読んで自分のものにするかは予測がつかない。テクストと想像力はジャンプして、海を越え、時をまたいで伝播する。
目次
序論
第1章 どこにもない場所から見た旧世界と新世界
第2章 他者としての自己―エリザベス朝時代イギリス人のアイデンティティ構築
第3章 起源の探求―『トリストラム・シャンディ』再読
第4章 トゥシタラと彼のポーランド人の読者
著者等紹介
ギンズブルグ,カルロ[ギンズブルグ,カルロ] [Ginzburg,Carlo]
歴史家。1939年、イタリアのトリーノに生まれる。ピサ高等師範学校専修課程修了。ボローニャ大学・近世史講座教授、カリフォルニア大学ロスアンジェルス校教授を経てピサ高等師範学校教授
上村忠男[ウエムラタダオ]
1941年兵庫県尼崎市に生まれる。東京大学大学院社会学研究科(国際関係論)修士課程修了。東京外国語大学名誉教授。学問論・思想史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。