出版社内容情報
〈われわれがあらためて採り上げるべきなのは、超克をめぐるヘーゲルの考え方に似た考え方です。すなわち、変形しつつ保存するという考え方です。あらゆる段階が、大人の生に寄与するのです。口唇的要素は未来に向かうエネルギーを提供します。肛門的要素は、粘り強さにおける別の寄与を、深く継続的な何かをもたらします。サディズムですら、闘争の精神を提供することによって、肯定的な寄与をもたらします。実際にあるのは、相対的な超克だけです。したがって、精神分析家たちは、過去がいわば破棄されるとは考えもしません。標準的なノルマル性格には前性器的な要素が備わっています。各段階はそれに先行する段階からの寄与を取りまとめ、錬り上げます。乳児であった以上、人間にはその痕跡が残るのです〉(「幼児の対人関係」)
著者のソルボンヌ講義1949-1952より、「子どもの意識の構造と葛藤」「子どもの心理‐社会学」「幼児の対人関係」「児童心理学の方法」「他者経験」の5編を収録。発達心理学や児童心理学の領域に大きな影響を与えてきた本書の現象学的研究方法は、今日では社会学・教育学・医学・看護学でも注目されている。メルロ=ポンティの前期思想から後期思想への発展を解明するうえでも重要な位置を占める書である。
内容説明
著者のソルボンヌ講義1949‐1952より、「子どもの意識の構造と葛藤」「子どもの心理‐社会学」「幼児の対人関係」「児童心理学の方法」「他者経験」の5編を収録。発達心理学や児童心理学の領域に大きな影響を与えてきた本書の現象学的研究方法は、今日では社会学・教育学・医学・看護学でも注目されている。メルロ=ポンティの前期思想から後期思想への発展を解明するうえでも重要な位置を占める書である。
目次
子どもの意識の構造と葛藤(子どもの意識の構造(その自然との関係に関する研究)
)子どもの心理‐社会学(発達の概念;ピアジェによる知覚から知能への移行に関する問題への導入;結論―ピアジェとゲシュタルト派における知能の考え方の比較;精神分析と社会学の相互関係;心理学的なものと社会学的なものの関係)
幼児の対人関係(幼児の対人関係―生誕から三歳まで;児童精神分析から見た幼児の対人関係)
児童心理学の方法(児童心理学における第一の難しさ;子どもの大人との関係。いくつかの記述;大人との子どもの関係。われわれの児童心理学のあるべき姿;閉じた子どもの心性という考え方への批判;方法論上の予備的注意;どのようにして、子どもについての厳密で科学的な認識を錬成するのでしょうか;本質的な諸原理(続けて一定数の口頭発表によって例証される)
児童心理学研究における実在論的心性に起因する誤謬
科学的心理学への批判
男性性と女性性についてのマーガレット・ミードの考え方
子どもにおける世界表象(ある学生の口頭発表への補足)
子どもの絵
鏡像
模倣
知的機能と他の心的機能のあいだの関係)
他者経験(最初の記述;体験されたものと身ぶりによって表現されたものの検証)
著者等紹介
メルロ=ポンティ,モーリス[メルロポンティ,モーリス] [Merleau‐Ponti,Maurice]
1908‐1961。1908年、フランスに生まれる。1926年、エコール・ノルマル・シュペリュール入学、在学中サルトル、ボーヴォワール、レヴィ=ストロースらと知りあう。1930年、哲学教授資格試験に合格。その前年にフッサールのソルボンヌ講演を、1935‐1939年には高等研究院におけるコジェーヴのヘーゲル講義を聴講。ルーヴァンのフッサール文庫に赴き、遺稿を閲覧したのは1939年。第二次世界大戦中は従軍・レジスタンス活動を経験した。1945年、学位論文として同年刊の『知覚の現象学』および『行動の構造』(1942)を提出。1946年、サルトルらとともに『レ・タン・モデルヌ』創刊。1948年、リヨン大学教授、1949年、パリ大学文学部教授を経て1952年、コレージュ・ド・フランス教授に就任。1961年没
松葉祥一[マツバショウイチ]
1955年生まれ。同志社大学文学研究科哲学・倫理学専攻博士課程満期退学。パリ第8大学博士課程中退。前神戸市看護大学教授。現在、同志社大学非常勤講師。哲学・倫理学専攻
澤田哲生[サワダテツオ]
1979年生まれ。パリ東大学大学院人文社会科学研究科博士課程修了。富山大学人文学部准教授を経て、東北大学教育学研究科・教育学部准教授。哲学・現象学専攻
酒井麻依子[サカイマイコ]
1990年生まれ。立命館大学大学院文学研究科博士課程後期課程修了。現在、立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員。哲学・倫理学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
-
- 和書
- 栄養教育論演習