出版社内容情報
「数か月前、わたしは妻の文(ウェン)を失った。それからいままでに感じたことをすべて報告しようとするのは空しいことだが、しかしこの波乱の時期に考察したいくつかのことをまとめておけば、わたしもまた有用な仕事を残せるかもしれない。これらの考察は、特段、わたし自身や文(ウェン)自身に関わるものではない。広い視野に立つなら、このような激動は豊かな教えをはらんでいる。わたしたちがなにによって成り立っているかを知らせてくれるのだ。」(『もうひとりのオーレリア』)
「出会ったのは半世紀前だった。今日まで語らずにきたのは、どう取りかかればいいかわからなかったからだ。わたしの人生にかくも深く刻まれた出来事の痕跡を残すため、いまからこの出会いについて語る。わたしの記憶には欠けているところがある。当時はまったくメモを取らなかったし、そのわけは読めばわかるが、かえってよかったのかもしれない。過去というものは、大部分を切り落とす必要があり、そうしてこそ本質が露わになる。」(『北京での出会い』)
中国古典思想の碩学が、不意に伴侶を喪失した感情の激流を日々書き留めた『もうひとりのオーレリア』と、若き二人の恋をはじめて物語る『北京での出会い』。分かちがたい両者から成る奇跡のような書物。
内容説明
中国古典思想の碩学が、不意に伴侶を喪失した感情の激流を日々書き留めた『もうひとりのオーレリア』と、若き二人の恋をはじめて物語る『北京での出会い』。分かちがたい両者から成る奇跡のような書物。
目次
北京での出会い(ひとつの出会い;最初の帰還;その後;備考)
もうひとりのオーレリア
著者等紹介
ビレテール,ジャン・フランソワ[ビレテール,ジャンフランソワ] [Billeter,Jean Fran〓ois]
1939年、スイス・バーゼル生まれ。ジュネーヴ大学文学部卒業後、パリ東洋語学校で中国語を専攻。1963年より、スイスからの初の留学生として北京に留学。翌年より北京大学で古典文学を学び、在学中に現地の医師、崔文(ツイウェン)と結婚した。帰国後は、パリおよび京都での研究を経て、1971年よりチューリッヒ大学助手、翌年よりジュネーヴ大学講師。1976年に李贅研究で博士号取得。1987年、同大学に新設された中国研究講座の教授に就任し、1999年、研究に専念するため早期退職した。退職後は旺盛な執筆活動をつづけ、荘子に関する一連の研究のほか、中国の歴史・言語・文化、ヨーロッパ概念、主体論、さらにリヒテンベルクのフランス語訳を発表するなど、幅広い分野で東西の垣根を越えた独自の思索を展開している。2015年にジュネーヴ市賞受賞。現在、ジュネーヴ大学名誉教授
笠間直穂子[カサマナオコ]
1972年、宮崎県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科単位取得退学。現在、国学院大学文学部准教授。フランス語近現代文学研究、翻訳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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