出版社内容情報
正常・異常をめぐるスティグマは、ただ漫然と生じたものではない。科学や医学はつねに権威をもって「異常」とすべきもののカテゴリーを作りだし、それはコミュニティを通して社会的・文化的に学習されてきた。本書はおもに精神疾患や発達障害のスティグマを中心に、スティグマが構築と再構築を重ねてきた変遷の力学を、18世紀以降、複数の戦時期を経て、高度に経済化した今日の社会に至るまでたどる。
しかし、だからこそスティグマとは本質的に、私たちの手で流れを変えうる「プロセス」であると著者は言う。汚辱や秘匿がいまだに残っている一方で、もはや「誰も正常ではない」と言えるほど、正常者・異常者を語るスティグマはその足場を失い、心身の障害を人間の多様性の一部として受け容れる潮流こそが勢いを集めつつある。
資本主義、戦争、身体‐心という三本の軸に沿って、本書は構成されている。著者は文化人類学者ならではの視点で、近年の「生物医学」化や、PTSD概念の功罪、非西欧的な価値観にも触れながら、歴史を多角的に描き出すことに成功している。
加えて、いずれもアメリカ精神医学界のキーパーソンであった著者の曾祖父、祖父、父、そして自閉症の娘をもつ著者自身という、四世代の個人の視点からミクロに捉えた史実が織り込まれているのも、本書のユニークな趣向だ。
内容説明
「文化が、精神疾患や発達障害をスティグマに結びつけられるのなら、間違いなく文化は、その結びつきに切れ目を入れることもできるはずだ。」そう確信できる理由は、スティグマの歴史の中に詰まっている。置き忘れてきた史実に学び、未来を主体的に作るための、最初の一冊。
目次
第1部 資本主義(「自立」のイデオロギー;精神病の発明;分裂した身体―性と分類;分裂した心)
第2部 戦争(戦争のさまざまな帰結;祖父がフロイトから得たもの;戦争はやさし;ノーマとノーマン;忘れられた戦争からベトナム戦争へ;心的外傷後ストレス障害;病気の予期)
第3部 身体と心(病気の可視化;他のどんな病いとも変わらない病い?;ECTという魔法の杖;心について話す身体;ネパールで身体と心の橋渡しをする;リスクを負うことの尊厳)
結論―スペクトラムについて
著者等紹介
グリンカー,ロイ・リチャード[グリンカー,ロイリチャード] [Grinker,Roy Richard]
ジョージワシントン大学、自閉症&神経発達障害研究所教授。文化人類学者。エスノグラフィー研究所ディレクター。Anthropological Quarterly誌主幹。専門はエスニシティー、ナショナリズム、心理人類学、スティグマ、自閉症など。心理人類学者としてはおもにアフリカ(コンゴ民主共和国など)・韓国をフィールドとし、韓国において自閉症に関する初の疫学的調査を行った
高橋洋[タカハシヒロシ]
同志社大学文学部卒。IT企業勤務を経て翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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