出版社内容情報
「この分析で重要な点は、政治制度の質と公衆衛生の成果の間に単純な相関関係はないことである。望ましい政治的・経済的成果をもたらすと考えられている政治制度の中には、公衆衛生を妨げるものもあれば、逆に促すものもある」(序文)
ワクチン接種義務や検疫のように個人や商業の自由を大きく制限する措置は、合衆国憲法の規定のもとではさまざまな軋轢を生んだ。一方、上下水道システムが充実して公衆衛生が大きく改善されたのは、合衆国憲法が私有財産権を保障して信用市場の安定を促したためだった。公衆衛生とはこのように、国家構造を規定するイデオロギーや市民の選好が互いに影響を及ぼしあった結果である。
本書では、天然痘・腸チフス・黄熱病という三つの感染症の事例について、アメリカの法制度との関係を中心に精緻に考察する。ハミルトンら合衆国憲法の起草者たちが各条項に込めたイデオロギーはどのようなものであったか。トクヴィルはアメリカ社会をどのように観察したか。諸外国ではどうか。そして実際に何が起こったのか。
本書の洞察は現今のアメリカ社会だけでなく、日本をふくむ世界各国の国家構造と公衆衛生との関係を考える手がかりとなるだろう。
内容説明
ワクチン接種義務や検疫のように個人や商業の自由を大きく制限する措置は、合衆国憲法の規定のもとではさまざまな軋轢を生んだ。一方、上下水道システムが充実して公衆衛生が大きく改善されたのは、合衆国憲法が私有財産権を保障して信用市場の安定を促したためだった。公衆衛生とはこのように、国家構造を規定するイデオロギーや市民の選好が互いに影響を及ぼしあった結果である。本書では、天然痘・腸チフス・黄熱病という三つの感染症の事例について、アメリカの法制度との関係を中心に精緻に考察する。ハミルトンら合衆国憲法の起草者たちが各条項に込めたイデオロギーはどのようなものであったか。トクヴィルはアメリカ社会をどのように観察したか。諸外国ではどうか。そして実際に何が起こったのか。本書の洞察は現今のアメリカ社会だけでなく、日本をふくむ世界各国の国家構造と公衆衛生との関係を考える手がかりとなるだろう。
目次
第1章 はじめに
第2章 タウンシップのイデオロギーから細菌説の福音へ
第3章 健康と繁栄の憲法的基盤
第4章 自由という伝染病
第5章 財産権保護による信用回復
第6章 帝国、連邦制、そして黄熱病の突然の終焉
第7章 結論
著者等紹介
トレスケン,ヴェルナー[トレスケン,ヴェルナー] [Troesken,Werner]
1963‐2018。経済学者。元ピッツバーグ大学経済学部教授。1992年にダグラス・ノースの指導のもと、ワシントン大学(セントルイス)で経済学の博士号を取得。かつて疾病に悩まされたアメリカの都市がどのようにそれを克服したのかに着目し、都市の死亡率転換の研究を行う。ほかにもアメリカ南部ジム・クロウ法などの人種隔離政策を中心とした制度論や、経済史など幅広く研究活動を展開。2018年、ピッツバーグ大学在職中に没
西村公男[ニシムラタカオ]
1978年生まれ。医学博士、日本消化器外科学会指導医・専門医。大和高田市立病院外科部長。2003年京都大学医学部卒。高知医療センター、国立がん研究センター研究所を経て、2017年より現職
青野浩[アオノヒロシ]
一般社団法人経済学101理事。おもに海外の社会科学の論文・論説・ブログ等を翻訳しWebで公開する活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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