感情史の始まり

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  • サイズ 46判/ページ数 608p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622089537
  • NDC分類 201.16
  • Cコード C1010

出版社内容情報

感情とは、感情史とは何か。近年、「感情」にアクセントを置いて学問のあり方を見直す動向が高まっている。「感情心理学」「感情の社会学」「感情の政治学」云々。歴史学の分野では、かつてリュシアン・フェーヴルが感情研究を提唱していたが、21世紀に入ってようやくさまざまな事件の理解や歴史文書の読み方に「感情」という新たな視点が導入されるようになった。動物やヒューマノイド機械にも感情はあるのか、感情は私たちの身体の外側に由来するのか内側に存在するのか、そして、感情は歴史を有するのか、そうだとしたらどのような史料から読み取れるのか。

このような基本的な問いを軸に、本書は感情史研究の過去・現在・未来を概観する。なかでも本書の特徴は、感情をめぐる社会構築主義と普遍主義という二つの考え方に正面から立ち向かう点だ。人間の感情は、人類学者たちが示してきたように、時代と地域と文化でそれぞれ異なる社会構築主義的なものなのか、それとも、脳科学者はじめ生命科学の領域で言われるように人類共通の普遍的なものなのか。著者はその二つの見方を架橋しながら、感情のあり方のグランドセオリーを展開し、歴史学における感情の扱い方の手法とその重要性を説く。哲学から図像分析まで、ジャンルを超えて縦横に論じる著者の叙述はじつに刺激的だ。

日本でもようやく注目されてきた感情史についての最も定評ある基本書であり、新しい人文学の可能性をひらく書でもある。

内容説明

感情とは、感情史とは何か。感情をめぐる社会構築主義と普遍主義を架橋し、グランドセオリーを描く試論。歴史学における感情の扱い方の手法と重要性を説く。感情を主題に人文・社会科学と生命科学を架橋する。歴史学研究の斬新な試論。

目次

序論 歴史と感情(感情とは何か;誰が感情を有するのか ほか)
第1章 感情史の歴史(リュシアン・フェーヴルと感情;フェーヴル以前の感情史 ほか)
第2章 社会構築主義―人類学(感情の多様性;旅行記と初期の人類学における感情 ほか)
第3章 普遍主義―生命科学(ポール・エクマンと基本感情;第三章 行程表 ほか)
第4章 感情史の展望(『感情の航海術』―ウィリアム・M.レディによる社会構築主義と普遍主義の克服の試み;感情実践 ほか)
結論

著者等紹介

プランパー,ヤン[プランパー,ヤン] [Plamper,Jan]
1970年生まれのドイツの歴史家。ギムナジウム卒業後に渡米し、1992年にブランダイス大学卒業。2001年にカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。その後ドイツに戻り、テュービンゲン大学やベルリンのマックス・プランク人間形成研究所で教育や研究に従事。2012年からロンドン大学ゴールドスミス・カレッジの歴史学教授。2018年からはケンブリッジ大学出版会の初歩叢書(エレメンツ・シリーズ)「感情と感覚の歴史」の編集主幹も務める

森田直子[モリタナオコ]
1971年岡山県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学、ドイツ・ビーレフェルト大学歴史・哲学・神学部で博士号取得。立正大学文学部准教授。専門はドイツ近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

デビっちん

20
感情には大きく2つ、時代と地域と文化でそれぞれ異なって構築される社会構築主義的感情と、脳科学や生命科学が解き明かす人類共通の普遍主義的感情の考えがあるようです。本書のメインとも言える二項対立的な両者の解説に紙面を割きながら、 著者はどちらにも否定的で第3の道を探す展望が最後に語られていました。2021/05/22

カイワレ大根

6
正直素人には全てを理解するのは難しいが、感情に関する文化的、社会的変遷を大雑把に辿るにはこれ一冊で十分そうだ。途方もない文献をまとめた筆者の取り組みに感服。なんせ書面の3分の1が解説と注意書きと参考文献のページ。2021/07/17

ちり

5
三章(生命科学)は理解するのがちょっと大変だなーと思いながらえっちらおっちら読んでいたら、「人文科学系の人が安易に神経科学の内容を援用するのは注意が必要(やるならしっかり理解してから)」というまとめだったので「ですよね…」という顔になった。2020/12/29

イキュア

4
感情について歴史的、人類学的、生命科学的にその成り立ちを本書は確認していく。今回の読書では、どちらかといえば人類学的な感情の側面に対して関心が強く傾く。時代や地域によって感情の感じ方、扱い方は異なっていることを改めて感じた。現代では、より個々人の所属しているコミュニティなどが細分化しており、感情をどのように感じるかもより多様化しているのではないだろうか。多様な感情があることを知り、相手を受け入れる準備をしておくことがこの時代には必要かもしれないと感じた。2022/06/19

Akiro OUED

4
ヒトの感情は、文化毎に規定されないと主張する。一方、歴史家としての著者は、感情が時間的な変化を受けるはずという。なんだか矛盾してるように読める。歴史とは、過去と現在の対話だというEHカーの主張は、対話の可能性を仮定してるけど、感情史家は、それは保証されないという。好著。2022/05/01

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