出版社内容情報
そのウイルスを制御する力を得たとき、ある人々は根絶を夢想し連帯を訴え、ある人々はそれを兵器に変えた。紆余曲折の歴史をたどる。
牛疫は、数週間で牛の群れを壊滅させる疫病である。徹底的な検疫と殺処分しか防ぐ手段がなく、その出現以来、この疫病は人々に恐れられてきた。
ところが20世紀初め、牛疫ウイルスをワクチンにできるとわかると、牛疫と人々の関係が変わり始める。恐るべきウイルスは、制御可能な力に変わったのだ。
宿主にワクチンで免疫を与えれば、地域からウイルスを排除できる。ある国での成功が他の国でのキャンペーンを誘発し、その先に地球上からの根絶という夢が生まれた。しかしその道のりは、各国の利害にたびたび翻弄されることになった。
その一方で、ワクチンの誕生は、自国の牛を守りながらウイルスで別の地域の食糧生産を攻撃できることを想像させた。一部の国々は第二次世界大戦中に生物兵器研究を開始する。研究は、大規模な根絶キャンペーンの陰で、時にはキャンペーンを主導する国によって、戦後も続けられた。
牛疫は、人類が根絶に成功した2種のウイルスの内の一つである。牛疫は、根絶に至る最後の150年間に、国際的な連帯の意義を示し、そして科学技術があらゆる目的で利用されうることを示した。疫病との戦いを記録し、科学研究のあり方を問う、必読の書。
内容説明
そのウイルスを制御する力を得たとき、人々はそこにさまざまな可能性を見た。ある人々は地球上からの根絶を夢想し国際的な連帯を呼びかけ、ある人々はそれを兵器に変えた。致死性の病原体の最後の世紀を追う。
目次
序章 グロス・イル、一九四二年九月
第1章 牛疫および疾病制圧のための国際協力の起源
第2章 第二次世界大戦における牛疫―GIR‐1
第3章 欠乏からの自由―UNRRAの牛疫キャンペーン
第4章 発展の仕組み―FAOの牛疫キャンペーン
第5章 ふたたびグロス・イルへ―戦後世界の生物戦
第6章 牛疫根絶
著者等紹介
マクヴェティ,アマンダ・ケイ[マクヴェティ,アマンダケイ] [McVety,Amanda Kay]
歴史学者。2006年にカリフォルニア大学で博士号を取得。マイアミ大学歴史学准教授を経て、マイアミ大学歴史学教授。専門は米国の外交政策と国際組織の歴史。「国際関係・科学・環境問題の交差点」に関心を持つ
山内一也[ヤマノウチカズヤ]
1931年、神奈川県生まれ。東京大学農学部獣医畜産学科卒業。農学博士。北里研究所所員、国立予防衛生研究所室長、東京大学医科学研究所教授、日本生物科学研究所主任研究員を経て、東京大学名誉教授。日本ウイルス学会名誉会員、ベルギー・リエージュ大学名誉博士。専門はウイルス学
城山英明[シロヤマヒデアキ]
1965年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業。同大助手、東京大学大学院法学政治学研究科講師、助教授を経て、東京大学大学院法学政治学研究科教授。2010年~2014年に東京大学政策ビジョン研究センター長、2014~2016年に東京大学公共政策大学院院長を務める。専門は行政学、国際行政論、科学技術と公共政策(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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Kazuyuki Koishikawa
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