出版社内容情報
水は地球上にもっとも多量にある化合物であり、すべての生体系の主要成分であるが、その構造と物性は十分に解明されていない。今日の物理化学の立場からの水、氷、水溶液の研究は、“水素結合”の考えが次第に定着しつつあった時点でバナールとファウラーが1933年に発表した論文が原動力となったと言えるであろう。以来、水、氷、水溶液の研究、或いは無機界、生物界において水が果たす重要な役割についての研究が続々行われ、基礎的研究の見地からだけでなく、応用の立場からも最近では環境問題と結びついて、ますます関心が高まり、広義の水に関する種々の国際会議が毎年のように開かれている。
本書は、水に関するおびただしい文献の中から、もっとも重要で信頼のおけるデータを要約し、またこれらのデータを関連づけるような有効な理論を示し、水の物性をその構造と関連づけることを目標としている。さらに最近、さまぎまの分野の科学者や技術者の水に対する関心が激増していることを考慮して、主題の論点を理解する上で必要な物理化学的知識を本文に含ませて、初等的な物理化学のコースをおえた人なら誰でも本文が理解できるように配慮されている。したがって、本書は極めてバランスのとれた入門的な標準教科書であるとともに、専門家の知識の整理にも大いに役立つであろう。
内容説明
水の構造と、水蒸気、氷、水(液体)の熱力学的、電気的、光学的物性を関連づける。物理化学的な予備知識を含む、入門的な教科書。
目次
1 水分子(水分子:実験にもとづく記述;水分子:理論にもとづく記述)
2 水蒸気(水分子の間に働く力;熱力学的性質)
3 氷(氷1の構造;氷の多形の構造;熱力学的性質;分光学的性質;水素結合)
4 液体としての水の性質(X線回折;熱力学的性質;静的誘電定数とNMR化学シフト;光学的性質;分子の移動速度に依存する性質;振動分光;水の構造:物性から導かれる結論)
5 水のモデル(小集合体モデル;混合物モデルとわりこみ分子のモデル;歪んだ水素結合のモデル)
著者等紹介
カウズマン,W.J.[カウズマン,W.J.] [Kauzmann,Walter J.]
1916‐2009。1916年ニューヨーク州マウント・バーノンに生れる。1937年コーネル大学で化学のB.A.を受け、1940年にプリンストン大学で物理化学のPh.D.を受けた。1940年から1942年までペンシルバニア州ピッツバーグのWestinghouse電機会社の研究員となり、1942‐1946年の間、政府関係の研究に従事した。1946年プリンストン大学化学科助教授、1963年教授に就任。1963‐1982年David B.Jones化学科教授。1982年退官。1966年Linderstrom-Lang金メダルを受賞した。36年にわたり物理化学の研究と教育に専心し、引退後も引き続き水の構造とたんぱく質の性質に関心を抱いた。2009年歿
アイゼンバーグ,D.[アイゼンバーグ,D.] [Eisenberg,David]
1939年シカゴに生れる。1961年ハーバード大学で生化学のB.A.を受け、1964年オックスフォード大学からPh.D.を受けた。オックスフォード在学中、Rhodes奨学生。1964年より1966年までプリンストン大学においてアメリカ科学基金(NSF)の博士研究員であった。1966‐1968年の間カリフォルニア工科大学の研究員。1968年カリフォルニア大学ロスアンジェルス校(UCLA)の化学および生化学科の教員となり、現在同学科教授。UCLAハワード・ヒューズ医学研究所研究員およびUCLA‐DOE構造生物学および分子医学研究所所長。生体高分子の構造および水の構造と物性を研究。アメリカ科学アカデミー会員
関集三[セキシュウゾウ]
1915年西宮市に生れる。1938年大阪大学理学部化学科卒業。理学博士。大阪大学理学部教授、関西学院大学理学部教授を経て、大阪大学名誉教授、元日本学士院会員。2013年歿
松尾隆祐[マツオタカスケ]
1939年池田市に生れる。1963年大阪大学理学部化学科卒業。1965年大阪大学大学院理学研究科修士課程修了。理学博士。大阪大学大学院理学研究科教授を経て、大阪大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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