出版社内容情報
空気から固定窒素をつくるハーバー=ボッシュ法の発明は、化学の力で文字どおり世界を一変する半世紀をひらいた。固定窒素は“賢者の石”であり、「それを探そうとする者はそれぞれ強迫的な思いにとりつかれ、それぞれの悲劇を味わった」
発明の前史から説き起こしているが、本書の中心はハーバーとボッシュ、とりわけカール・ボッシュの物語だ。アンモニア合成法の発明によって物質変換の威力の虜となり、一個人には背負いきれないほどの社会的責任を担ってしまった一人の天才的なエンジニアとして、ボッシュの人物像が浮かび上がる。彼が直接間接にかかわった無数の命の重さを考えれば、ときに表層的とも思える描像ではあるが、にもかかわらず読む者を何度も戦慄させるに足る事実がここには書かれている。将来、エネルギーと環境の問題を克服する夢の科学技術が現れるなら、それこそは、人類が絶対にあけてはならないパンドラの箱かもしれない。
大量の固定窒素が生物圏全体を変質させ、戦争の形態を変え、ヨーロッパの政治経済を大きく変容させた。発展の裏で人々にもたらされた悲惨、環境への負荷の大きさもまた、計りしれない。最終章では窒素サイクルを変えた人類へのしっぺ返しともいうべき、グローバルな環境影響が明かされる。今日の繁栄の代償の大きさに言葉を失う。
内容説明
空中窒素固定法という化学史上最大の発明が生物圏を変容させ、戦争を駆動した戦慄の歴史を掘り起こす。
目次
第1部 地球の終焉(危機の予測;硝石の価値;グアノの島 ほか)
第2部 賢者の石(ユダヤ人、フリッツ・ハーバー;BASFの賭け;ターニングポイント ほか)
第3部 SYN(ハーバーの毒ガス戦;敗戦の屈辱;新たな錬金術を求めて ほか)
著者等紹介
ヘイガー,トーマス[ヘイガー,トーマス] [Hager,Thomas]
アメリカ、オレゴン州ユージーン在住の医化学系ジャーナリスト。医微生物学と免疫学を修めたのち、米国国立癌研究所の広報担当を経てフリーランスのライターとなり、医療関連の記事をAmerican Health,Journal of the American Medical Associationなどに寄稿。Oregon Quarterlyの創刊に関わり現在まで10年以上エディターを務めつづけるなど、地元を中心に活動している
渡会圭子[ワタライケイコ]
翻訳者。上智大学文学部卒業
白川英樹[シラカワヒデキ]
1936年生まれ。筑波大学名誉教授。導電性高分子(ポリアセチレン)を発見し、先駆的な開発を主導した。1983年高分子学会賞受賞。2000年、アラン・J・ヒーガー博士、アラン・G・マクダイアミッド博士とともにノーベル化学賞受賞。同年、文化勲章受章。日本科学未来館などで実験教室を開き、子どもたちに科学実験の楽しさを伝える活動も続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Akiro OUED
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