出版社内容情報
ヨーロッパ精神史に聳える二人の思想家が目ざしたものは何であったか。碩学による中世思想への最良の道案内。
「アウグスティヌスは魅力的な個性の持ち主であったにちがいない。……かれのカルタゴ的灼熱と情熱は、寛大さと人間的理解により浄化されていた。かれは人間の心の深淵を測ったのであったが、しかし卓越性も洞察したのであった。かれを象徴するものは燃えるような心であり、高みへむけられたまなざしである。」
「聖トマスは静かで瞑想的な性格であったにちがいない。かれの人生は直線的で明白な軌道をたどり、かれの労力はひたすら学問にのみあてられた。すべて高貴なもの、善きもの、真なるものに開かれていたかれの魂は、自己自身の経験にもとづく人間的深淵の深みを知ることはなかった。……人間の精神には見通すことのできない神秘が与えられているということを知っているのではあるが、にもかかわらず、存在と世界秩序の合理性への確固とした信頼によってささえられている。」
ローマ帝国没落のさなか、キリスト教思想形成期に生きたアウグスティヌスと、中世キリスト教界の円熟期に生きたトマス・アクィナス――対照的な個性の相違をもってヨーロッパ精神史に聳えるこの二人の思想家が目ざしたものは何であったのか。中世哲学史の碩学による本書は、テキストに即して両者の思考過程をたどりつつ、現代におけるその意義を描き出し、キリスト教ヒューマニズムを基調とする中世思想への最良の道案内となっている。
内容説明
ローマ帝政没落のさなか、キリスト教思想形成期に生きたアウグスティヌスと、中世キリスト教界の円熟期に生きたトマス・アクィナス―対照的な個性の相違をもってヨーロッパ精神史に聳えるこの二人の思想家が目ざしたものは何であったのか。中世哲学史の碩学による本書は、テキストに即して両者の思考過程をたどりつつ、現代におけるその意義を描き出し、キリスト教ヒューマニズムを基調とする中世思想への最良の道案内となっている。
目次
第1部 アウグスティヌス―西洋の教師(アウグスティヌスの哲学的解放;神の探求へ;宇宙;道徳的および社会的秩序)
第2部 トマス・アクィナス―公同の博士(哲学と神学;神;創造;人間;認識論;倫理学)
著者等紹介
ジルソン,エティエンヌ[ジルソン,エティエンヌ] [Gilson,´Etienne]
1884‐1978。フランスの卓越した哲学者であり、とくに中世哲学思想研究では世界的権威としても知られる。パリに生まれ、ソルボンヌの哲学史教授、コレジュ・ド・フランスの中世哲学史教授を経て、その後長年、カナダのトロント中世研究所の所長を務める。その間、アメリカ、イギリスの諸大学へ招かれて講義をおこない、それをもとに数々の名著を生み出した。デカルト研究において中世思想と近代思想の対話をこころみた。また、中世哲学全般に関する著書を著わすとともに、アウグスティヌス、トマス・アクィナス、ボナウェントゥラなど個々の思想家についてもすぐれた著書や論文を残した
ベーナー,フィロテウス[ベーナー,フィロテウス] [B¨ohner,Philotheus]
1901‐1955。ニューヨークのフランシスコ会の研究所のすぐれた中世思想研究家
服部英次郎[ハットリエイジロウ]
1905年和歌山県に生まれる。京都大学文学部哲学科卒業。神戸大学、名古屋大学、奈良女子大学、関西大学教授を歴任。1986年歿
藤本雄三[フジモトユウゾウ]
1936年大阪市に生まれる。関西大学文学部哲学科卒業・京都大学大学院研究科修士・博士課程修了。元武庫川女子大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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