出版社内容情報
全体主義が世界を覆った20世紀、ハンナ・アーレントは未曾有の事態に言葉を与える同時代の道標であった。冷戦崩壊以降、この卓越した政治哲学者への注目はふたたび世界的な高まりを見せている。
そのきかっけを作ったのが本書の著者E・ヤング=ブルーエルである。ブルーエルは学派などをいっさい形成しなかったアーレントのほぼ唯一の弟子といえる人物で、その著『ハンナ・アーレント伝』は最も信頼のおける評伝として高い評価を受け、アーレント再読の機運を生み出した。
本書は『全体主義の起源』『人間の条件』『精神の生活』を軸に、アーレントの思想の根源をとらえ、現代世界の緊迫の問題へとつないでいく。アーレントが徹底して思考したことをそのつどの「今」との関係でどう生かすのかということを、ブルーエルは30年余の内的対話を経て具体的に遂行して見せた。アーレントから学んだ世界への徹底した情熱が、アーレントを鮮やかに甦らせたのである。
序章
1 『全体主義の起源』と21世紀
2 『人間の条件』と重要である活動
3 『精神の生活』について考える
注
ハンナ・アーレントの著作
謝辞
訳者あとがき
索引
エリザベス・ヤング=ブルーエル[エリザベスヤングブルーエル]
1946年に生まれる。ニューヨークのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチでハンナ・アーレントを指導教官として学び、1974年博士号取得(哲学専攻)。現在、コロンビア大学精神分析訓練研究所研究員。著書に『ハンナ・アーレント伝』(晶文社、1999)『偏見と差別の解剖』(明石書店、2007)、Anna Freud: A Biography (1988), Mind and the Body Politic (1989), Where Do We Fall When Fall in Love? (2003), Why Arendt Matters(2006, 『なぜアーレントが重要なのか』矢野久美子訳、みすず書房、2008)などがある。
矢野久美子[ヤノクミコ]
1964年に生まれる。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。現在 フェリス女学院大学国際交流学部教授。思想史専攻。著書に、『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』(みすず書房、2002)『ハンナ・アーレント――「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』(中公新書、2014)、訳書に『アーレント政治思想集成』全2巻(共訳、みすず書房、2002)、アーレント『反ユダヤ主義――ユダヤ論集 1』『アイヒマン論争――ユダヤ論集 2』(共訳、みすず書房、2013)、E・ヤング=ブルーエル『なぜアーレントが重要なのか』(みすず書房、2008)他。