出版社内容情報
世界的文学史家となった著者が40年ぶりにバルトからの手紙を読みつつ、青年期の自画像と「ロラン」の生き方を重ねて描く名エッセー「もし私がこの本を『ロランと私』と名づけていたなら、思い上がりを犯してしまっていただろう。ロランは生前のプルーストと接したことがなかったので、『プルーストと私』と言っても傲慢にはならなかったが、私は生前の彼、ロランを知っていたので、無邪気に『ロランと私』とは言えない。
じつを言えば、肝心なのは自分を彼と比較することでも、彼に同一化することでもない。彼の死後三十五年経ったいま、これまでも頭のなかで、また夢のなかでよくしてきたように、われわれの友情を再考すること、その各段階をあらためてたどり直し、記憶を掘り起こし、彼から受けた恩恵を確認し、彼が与えてくれたものに感謝することが問題なのだ。
人は無理強いされないと、この種の吟味には取りかからない。あるできごとが生じて、そうせずには済まなくなるまで、抵抗しつづけるものだ。以下は、私のロラン探索の記録である。」
コレージュ・ド・フランス教授となった世界的文学研究者が、青年の自分に宛てられたバルトの手紙を読み返し、往時の師弟関係と友情を見つめなおす。名著『恋愛のディスクール・断章』『明るい部屋』誕生の貴重な証言であり、「あのころ」をめぐる痛切な文学作品である。
アントワーヌ・コンパニョン[アントワーヌ コンパニョン]
1950年、ベルギー、ブリュッセルに生まれ、父親の勤務の関係で、十代の数年をアメリカ合衆国で過ごした。理工科大学校、国立土木学校という理系のエリート校を卒業したが、その後、本格的な文学研究を志した。パリ・ソルボンヌ大学教授を経て、2006年よりコレ―ジュ・ド・フランス教授(「フランス近現代文学:歴史・批評・理論」講座)。コロンビア大学教授を兼任。バルト、プルースト、モンテーニュ、ボードレール、文学史、文学理論に関する著書が多数あり、そのうち『書簡の時代――ロラン・バルト晩年の肖像』(中地義和訳、みすず書房)、『近代芸術の五つのパラドックス』(中地義和訳、水声社)、『文学における理論と常識』(中地義和・吉川一義訳、岩波書店)、『第二の手:または引用の作業』(今井勉訳、水声社)、『アンチモダン:反近代の精神史』(松澤和弘監訳、名古屋大学出版会)、『寝るまえ5分のモンテーニュ』(宮下志朗・山上浩嗣訳、白水社)の邦訳がある。また、『ロラン・バルトの遺産』(石川美子・中地義和訳、みすず書房)に、「ロラン・バルトの小説」が収録されている。
中地義和[ナカジヨシカズ]
1952年生まれ。1976年、東京大学教養学科卒業。1985年、パリ第III大学で博士号取得。1986年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。専攻はフランス近代詩とりわけランボー。著書Combat spirituel ou immense derision. Essai d’analyse textuelle d’Une saison en enfer (Corti, 1987)、『ランボー:精霊と道化のあいだ』(青土社)『ランボー自画像の詩学』(岩波書店)など。訳書に、コンパニョン『近代芸術の五つのパラドックス』(水声社)『文学における理論と常識』(共訳、岩波書店)、マルティ/コンパニョン/ロジェ『ロラン・バルトの遺産』(共訳、みすず書房)、『ランボー全集』(共訳、青土社)、バタイユ『エロティシズムの歴史』(共訳、哲学書房)、同『至高性』(共訳、人文書院)、『黄金探索者』『隔離の島』『嵐』『ル・クレジオ、映画を語る』ほかル・クレジオの小説・エッセイ多数、『ロマネスクの誘惑』(ロラン・バルト著作9、みすず書房)など。
内容説明
われわれの友情を再考すること、その各段階をあらためてたどり直し、記憶を掘り起こし、彼から受けた恩恵を確認し、彼が与えてくれたもに感謝すること。
著者等紹介
コンパニョン,アントワーヌ[コンパニョン,アントワーヌ] [Compagnon,Antoine]
1950年、ベルギー、ブリュッセルに生まれ、父親の勤務の関係で、十代の数年をアメリカ合衆国で過ごした。理工科大学校、国立土木学校という理系のエリート校を卒業したが、その後、本格的な文学研究を志した。パリ・ソルボンヌ大学教授を経て、2006年よりコレージュ・ド・フランス教授(「フランス近現代文学:歴史・批評・理論」講座)。コロンビア大学教授を兼任
中地義和[ナカジヨシカズ]
1952年生まれ。専攻はフランス近代詩とりわけランボー。東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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