試行錯誤に漂う

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  • サイズ B6判/ページ数 307p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622085416
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

「僕はとにかく国語的にはだめでも、ちゃんとイメージを伝えたい」――書くこと、考えることの自由を体現する小説家の最新エッセイ。「私がこの“試行錯誤”ということを最初に思ったのは、パブロ・カザルスの、バッハの『無伴奏チェロ組曲』を弾いているときに聞こえる、弦の上を指が動いてこすれる音と弓が弦に触れる瞬間の音楽になる一瞬間の音だった。どちらもノイズということだが、私はこれを最高級の蓄音機でSPレコードを再生してもらって聴くと、奏者と楽器が自分がいまいるまったく同じこの空間にいると感じられるほどリアルという以上に物質的で、その音からブルースが聞こえた。
弦の上を指が動いてこすれる音や弓が弦に触れる瞬間の音はだからノイズではない。その音が弦楽器を弦楽器たらしめ、チェロをチェロたらしめる。カザルスが弾いた音の中にブルースの響きまであったのではなく、そのこすれる音の中にカザルスの演奏がありブルースもあった。弦楽器が譜面=記号で再現可能な行儀のいい音の範囲を出るときに、奏者の指も体もそこにあらわれ、肉声もあらわれる。(…)
表現や演奏が実行される前に、まずその人がいる。その人は体を持って存在し、その体は向き不向きによっていろいろな表現の形式の試行錯誤の厚みに向かって開かれている」
(本書「弦に指がこすれる音」より)

「私」をほどいていく小説家の思考=言葉。
芸術の真髄へといざなう21世紀の風姿花伝。

1 弦に指がこすれる音
2 方向がない状態
3 果てもなくつづく言葉の流れ
4 書き手の時間・揺れ
5 小説という空間
6 未整理・未発表と形
7 ランボーのぶつくさ
8 一字一句忘れない
9 読者の注意力で
10 作者の位置から落ちる
11 素振りについて
12 小さい声で書く
13 そのつど映るラストの場面
14 意識と一人称
15 読者と同じである作者
16 そこにある小説
17 小説は作者を超える(1)
18 小説は作者を超える(2)
19 書きながら生まれる感じ
20 『朝露通信』通信
21 神に聞かれないように祈る
22 奥の奥の光景
23 おせち料理の絵
24 出会い三題
25 ナットとボルト
26 ザワザワしてる
27 ラカンに帰郷した
28 言葉はいつ働き出すのか
29 論理、自我、エス、スラム
30 全くそうであり全くそうでない
31 下から上に向かって読む
32 運命と報酬

あとがき

保坂和志[ホサカカズシ]
1956年山梨県生まれ。鎌倉で育つ。早稲田大学政治経済学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年「この人の閾(いき)」で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2013年『未明の闘争』で野間文芸賞を受賞。その他の小説に、『猫に時間の流れる』『残響』『カンバセイション・ピース』『朝露通信』『地鳴き、小鳥みたいな』など。小説論・エッセイに『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』『考える練習』『遠い触覚』『試行錯誤に漂う』など。絵本に『チャーちゃん』(画 小沢さかえ)がある。

内容説明

私は小説はとにかく作品ではなく日々だ。「私」をほどいていく小説家の思考=言葉。芸術の真髄へいざなう21世紀の風姿花伝。

目次

弦に指がこすれる音
方向がない状態
果てもなくつづく言葉の流れ
書き手の時間・揺れ
小説という空間
未整理・未発表と形
ランボーのぶつくさ
一字一句忘れない
読者の注意力で
作者の位置から落ちる〔ほか〕

著者等紹介

保坂和志[ホサカカズシ]
1956年山梨県生まれ。鎌倉で育つ。早稲田大学政治経済学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年「この人の閾(いき)」で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2013年『未明の闘争』で野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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禿童子

17
カフカ、ベケット、小島信夫、坂口ふみ、音楽はボブ・ディランとデレク・ベイリーのインプロヴィゼーション、カトリック司祭の本田哲郎、ラカンに親炙している、途中から「、」で文章をつなぐ文体になる、保坂の文章は小説も随筆も地続き。引用:「小説は余暇の時間に読むものではない、人生の時間として読まれるものでなければ小説ではない、(中略)この社会に流通する思考様式や世界像を使って小説を書いたら、小説はそれだけでこの社会を追認することになる。」2018/11/09

勝浩1958

13
筋立てがなく一見して思いつくままにダラダラと(もの凄い量の原稿用紙が反故になっているのかも知れないが)書かれた文章が、私には心地よい。そもそも日常生活を送っていて、考えが一つ処にまとまったり理路整然と落ち着くところに落ち着いたりすることもなく、いろいろな雑念のようなイメージが幾重にも並行して漂っている状態が常態化しているのではないだろうか。それを文章にすると”すとんと”分かったような気になるのだが、その書いている文章に触発されて新たなイメージがまた漂いだすような気がする。2016/11/27

吟遊

11
楽器の練習、野球の練習でもそうであるように、小説を書くということは日々、書くことそのものであって、捨てられた原稿も含めて、それが小説家の「書く」ことなのだ。だから、完成された作品にこだわる必要もなく、それはごく一部にすぎない。日々の試行錯誤、手を動かす、考える、それらすべてが小説だ、という趣旨。また、プロットも構成も計算され、細部の正確さにこだわった「小説」という形式を逸脱してもよいのではないか、とも。とりわけ、遺稿として残ったカフカと、著者が愛するベケットを取り上げながら、同じテーマの変奏。文体も変!2017/03/12

ぽち

9
絶対絵画、というものにずっと強く惹かれていた、いやさっきGoogleで調べてみたら自分がそういう言葉で認識していたものはどうやら「無対象芸術」というらしい、ともかくそのような表現?に惹かれていて、それを小説でできないものか、絶対絵画、いや「無対象芸術」足り得る小説、そういう小説ができないものか、とやはりずっと思っていた。 2017/12/20

ぷらんとぱいん

4
保坂和志氏は私が大学生の頃最も影響を受けた作家の一人で『アウトブリード』や『私という演算』を読んで、ドゥルーズやカフカに出会った。同じようなエッセイなのだが、明らかに文体が違う。アウトブリードの頃はまだ【言いたいこと】を他者に伝わるような形にしようとしていたのだが、この本やカフカ練習帳などは、本当に取り止めのなく緩んでいくような文体で私はまだアウトブリードの方が読みやすいけど、読めばわかる通り目指すものはその【読みやすさ】とは対極にあるものなのだからその読みづらさこそが保坂和志の深化の証なのではないか。2018/11/24

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