出版社内容情報
沖縄国体で日の丸を焼いた知花昌一など、昭和末期に「常識」に抗った三人の日本人を描き、20年後の今年、ふたたび彼らと対話する。
内容説明
「この社会で差しだすご褒美に膝を屈するのを拒んでいる」―「自粛」「常識」という社会の抑圧に、抵抗できるか。全米図書賞受賞。
目次
プロローグ
1 沖縄―スーパーマーケット経営者
2 山口―ふつうの女
3 長崎―市長
エピローグ
著者等紹介
フィールド,ノーマ[フィールド,ノーマ][Field,Norma]
1947年東京に生れる。1983年プリンストン大学にて博士号取得。現在シカゴ大学東アジア言語文化学科教授(日本文学・近代日本文化論)。『天皇の逝く国で』で全米図書賞受賞
大島かおり[オオシマカオリ]
1931年に生れる。東京女子大学文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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松本直哉
22
日本国憲法では天皇の地位は「国民の総意」(the will of the people)によると規定されるが、本書に描かれる3人(国体での掲揚に抗議して日の丸を焼く男性、殉職した自衛隊員の夫が勝手に合祀されるのに抗議する女性、天皇の戦争責任を問うたために狙撃される市長)へのていねいな取材を読むと、総意なんてないのではないかと思えてくる。たった一人でも異議を唱えれば総意とは言えないのだから。アメリカ人を父に、日本人を母にもつ著者でなければ見えない、戦後日本の奇妙な天皇観への、距離を置いた観察が興味深い。2018/11/11
おさと
6
ドライだからこそ伝わる何か。2017/11/23
ぱせり
4
いったいこの本、三十年前の出来事を書いているのだろうか。起きた事件や波及していくあれこれは、まるでついこの間、見聞きしたことのようだ。軍歌をがなりながら通る「右翼」の街宣車は最近は見ないが、それに代わるものがあり、当たり前のことを当たり前に言おうとする人の声を塞ごうとしているではないか。三十年前と同じ論調で。2021/09/29
橘
4
沖縄で、山口で、長崎で。昭和天皇の病と死の時期に出会った人たち、自らの信念で抵抗者となった語り手とその背景を、半身は日本人である著者が記録する試み。市民のおおかたは気にも留めない過去を、丁寧に聞き取り、濃密な空気の中に閉じ込める。英語圏でかつて最も読まれた書籍の内容に、日常が揺らぐ。2019/10/20
Takao
2
2011年11月10日発行(1994年に発行されものの増補版、初版)。2014年2月22日、伊勢原市で行われた七沢多喜二祭での著者の講演の際に求め、著者のサインもいただいた。それから5年、講演での著者の語り口が思い起こされる。知花昌一(沖縄・読谷村)、中谷康子(山口)、本島等(長崎)の3氏を軸に、現代日本社会の諸問題を綴る。「日の丸」「君が代」、靖国神社(護国神社)、昭和天皇の戦争責任、この3つの問題を並べてみると、少数者(少数意見)に対して冷酷で攻撃的な日本のマジョリティの問題性に改めて気がついた。2019/02/20