内容説明
『精神医学ハンドブック』で知られる著者が誤診例をまとめた名著。再刊にあたり、「うつ病の労務災害」「発達障害」「精神安定剤・睡眠薬の副作用」など今日的なトピックを追加した。さらに最終章に加えた論考「精神科診断の宿命と使命」では、診断に必要な経験と知識、操作的診断運用上の注意点を踏まえながら、あらためて精神科診断の基本を整理する。精神症状のみならず付随する身体症状にも着眼した症例検討は、精神科以外の医師にも日々の臨床の一助となるだろう。研修医から精神科志望者まで、診断学への入口に最適の一冊。
目次
第1部 精神科診断における誤診と了解(誤診とは;了解をめぐって)
第2部 症例の検討(身体疾患の症状と了解;気分(感情)障害と了解
うつ病の労務災害と職場復帰
統合失調症と了解
パニック障害と了解
精神安定剤・睡眠薬の副作用
発達障害と了解
精神科診断の宿命と使命―常識的診断と操作的診断基準)
著者等紹介
山下格[ヤマシタイタル]
1929年札幌生まれ。北海道大学名誉教授(医学部精神医学講座)、北星学園大学前教授(社会福祉学部)。医療法人平松記念病院勤務(外来診療)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハスキー
2
★4/精神科医を志す医学部生あるいは医学部を目指す高校生、もしくは心理系の大学でカウンセリングを勉強する大学(院)生向けの本なのでしょうか、出てくる単語が専門的(疾患名、薬品名、その他病名・医学用語)で、素人には少し難しい箇所がありました(就寝前に読もうとしたら1ページほどで眠気が襲ってきました)。そのため、事例の箇所を中心に読みました。よく精神科系の疾患は、初診から数ヶ月後に正式な(という表現が適切かわかりませんが)診断名が付くと聞きますが、ここに記載されている事例を読んで、納得しました。2020/08/18
Asakura Arata
1
「了解」という概念をメインに論を進める。発達障害についても言及されている。2010/05/30
Jau
0
自発的に思いの丈を十分語ってもらうこと その結果を必要に応じて診断基準の文言と照合する (操作的診断の正しい利用法) 第二軸以下の検索によって、心理状態や生活状況に関するさまざまな問題がとらえられる。〜第一軸に加えて第二、第三、四、五軸の状況を検討することは〜(〜知的水準と性格傾向〜身体的疾患〜現在及び過去の生活状況や心理状態〜という、)従来の常識的診断と同様の診断手法に帰着する2024/06/22
クマリカ
0
40年前の古典的名著を10年前に再編集したもの。 70年代の力動精神医学の型にはまった早すぎる『了解』を戒めた意味での誤診を核にしていると思うが、精神科診察における客観的診断基準の欠如、患者主観や内面に踏み込まざるを得ない特異性についてヤスパースの了解を主軸に多方面から論じている。 診察に巾と厚みをもたらす意味であえて誤診という観点から優しく諭す。 記述→力動→精神薬理/DSMの歴史的な視点がすごい。 加筆部はちょっと樹に竹を継いだ感。 80年代の精神医学書の症例や統合失調論のおもしろさを再認識した。 2020/01/30