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内容説明
苛酷な自然の中で独自の文化を育み、たくましく生きる島人たち。その暮らしぶりを誠実に記録した紀行文学の傑作を、気鋭のアイルランド文学者によるみずみずしい新訳でお届けする。
著者等紹介
シング,J.M.[シング,J.M.][Synge,John Millington]
1871‐1909。1871年ダブリン郊外のプロテスタントの家系に生まれる。同市のトリニティ・カレッジを卒業後、ドイツ、イタリア、フランスなどを転々としながら文学や音楽を学ぶ。その後、パリで出会ったW.B.イェイツのすすめでアラン諸島に赴き、『アラン島』(1907年)を著わしたほか、島での取材や体験をモチーフにつかった戯曲などを上演、アイルランドの文芸復興に大きく寄与した
栩木伸明[トチギノブアキ]
1958年東京生まれ。上智大学大学院文学研究科英文学専攻博士単位取得退学。早稲田大学教授。専攻はW.B.イェイツ以降の現代アイルランド文学・文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
45
シングの文章が非常に私のような年寄りにとっては心地よさを与えてくれます。アイルランドがふるさとの彼は、アラン諸島に渡り、そこに住んでいる人々の話を書き記しています。ケルトの幻想的な感じがよく判るような気がします。岩波文庫でも出ているようなのでそちらも読みたいという気になりました。2015/03/17
seacalf
39
妖精伝説が今なお生活に根差しているアイルランド、その中でも図抜けて神秘的な場所がアラン諸島だ。シングが訪れた当時よりも観光地化しているとはいえ、おとぎ話に登場するかのようなこの島々は、確かに現代にも存在する。厳しい自然と自分の人生とを見事に調和させた人生を謳歌しているかつての島の人々を、シングの穏やかで冴えた語りがとても魅力的に浮かび上がらせる。今年のベストに入る極上の読書体験。イェイツの弟が描いた挿絵も素晴らしい。自分の足でイニシュモア島の土を踏みしめた感動は今でも忘れられない。とにかく秀逸な紀行文。2017/12/15
niaruni
10
方言の翻訳って難しいだろうに…それがとても自然で、心地よいリズムになっている。本当に島のおじいの語りを聴いているみたい。ちゃんと方言っぽいのに、日本のどこの方言でもないような… ひと昔まえの翻訳は、方言と言えば東北弁一辺倒で訳されていた。そういう点にも新訳の意味ってあるなあと実感。2012/04/24
ふくろう
9
だんろの前で、ゲール語で語られる妖精話。話のお礼はフィドルの演奏。「これ、本当の話でな」。パブで密造酒を飲みながら、ずっとおじいの話を聞いていたい。2010/12/26
刳森伸一
8
アイルランドの離島であるアラン諸島の滞在記。島の人々との交流や葬式などの文化が魅力的に書かれていて、紀行文の名作として読み継がれているのも頷ける。要所要所で挿入される民話の豊かさがまた全体を引き立てていると思う。特に自分を害した人をピストルで撃つ民話なんて初めて読んだ。2018/02/26