出版社内容情報
今日のヨーロッパを席巻するテロと難民問題、日本の民主主義の危機を考えるさいの必読書。20数年前に刊行された書が今ここに蘇る。〈いまヨーロッパを悩ませているテロリズムの背景には、ヨーロッパがもたらした価値そのもの――もちろん民主主義を含む――に対する強烈な拒絶反応がある。「ヨーロッパは岬に過ぎない」という言明も、そうした反応の中ではおそらく、謙遜を装った傲慢な言葉として受け止められるであろう。デリダにはそうした可能性が十分に分かっていたはずである。だからこそ彼はl’autre cap(別の岬、別の方向性)と言うだけでは不十分であり、le cap de l’autre(他者の方向性)と言うだけでも不十分であり、capの論理を超え出て、l’autre du cap(キャップとは異なるもの、キャップの他者)にまで至らねばならないと述べていたのである。〉(國分功一郎)
ソ連・東欧の崩壊後、噴出するナショナリズムと人種主義の暴力が統合を進めるヨーロッパに暗雲を投げかけていた1993年に刊行された本書は、二十数年を経た現在、まさに必読書として蘇った。ヨーロッパの難民問題とテロ、日本の民主主義の危機について、本書を通して新たに考えたい。
今日
他の岬 記憶・応答・責任
日延べされた民主主義
訳者あとがき
解説――二重の義務(國分功一郎)
ジャック・デリダ[ジャック デリダ]
1930-2004。アルジェに生まれる。20世紀を代表する思想家。現象学の再検討から出発し、ニーチェやハイデガーの哲学を批判的に発展させる。脱構築、差延、散種、グラマトロジーなどの概念を作り出し、ポスト構造主義を代表する哲学者と目される。高等師範学校等の講師を経て、1984年から社会科学高等研究院でセミネールを実施。同時代の諸問題を西洋哲学の根本問題とともに論じ、晩年は「来たるべき民主主義」の思考を練成させる。
高橋哲哉[タカハシテツヤ]
1956年福島県に生まれる。1983年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。哲学専攻。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。著書に『逆光のロゴス』(未來社、1992)『記憶のエチカ』(岩波書店、1995)『デリダ』(講談社、1998)『戦後責任論』(講談社、1999)『歴史/修正主義』(岩波書店、2000)『証言のポリティックス』(未來社、2004)『靖国問題』(筑摩書房、2005)『沖縄の米軍基地』(集英社、2015)ほか。訳書に、デリダ『他の岬』(共訳、みすず書房、1993)『有限責任会社』(共訳、法政大学出版局、2002)『ならず者たち』(共訳、みすず書房、2009)などがある。
鵜飼哲[ウカイサトシ]
1955年東京都に生まれる。フランス文学・思想専攻。1982年京都大学大学院文学研究科修士課程修了。1984年から88年までパリ第8大学に留学。現在、一橋大学大学院言語社会研究科教授。著書に、『抵抗への招待』(みすず書房、1997)『償いのアルケオロジー』(河出書房新社、1997)『応答する力:来るべき言葉たちへ』(青土社、2003)『主権のかなたで』(岩波書店、2008)『ジャッキー・デリダの墓』(みすず書房、2014)ほか。訳書に、ジュネ『恋する虜:パレスチナへの旅』(共訳、人文書院、1994)『アルベルト・ジャコメッティのアトリエ』(現代企画室、1999)『シャティーラの四時間』(共訳、インスクリプト、2010)デリダ『他の岬:ヨーロッパと民主主義』(共訳、みすず書房、1993)『盲者の記憶:自画像およびその他の廃墟』(みすず書房、1998)『友愛のポリティックス』(共訳、みすず書房、2003)『生きることを学ぶ、終に』(みすず書房、2005)『精神分析の抵抗:フロイト、ラカン、フーコー』(共訳、青土社、2007)『ならず者たち』(共訳、みすず書房、2009)などがある。
國分功一郎[コクブンコウイチロウ]
1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。高崎経済大学経済学部准教授。哲学。著書に、『スピノザの方法』(みすず書房、2011)『暇と退屈の倫理学』(朝日新聞社、2011)『来るべき民主主義』(幻冬舎、2013)ほか。訳書 デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店2004)コールブリック『ジル・ドゥルーズ』(青土社2006)ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫2008)、共訳 デリダ『そのたびごとにただ一つ、世界の終焉』(全2巻、岩波書店2006)フーコー『フーコー・コレクション4』(ちくま学芸文庫2006)ガタリ『アンチ・オイディプス草稿』(みすず書房2010)。
内容説明
ソ連・東欧の崩壊後、噴出するナショナリズムと人種主義の暴力が統合を進めるヨーロッパに暗雲を投げかけていた1993年に刊行された本書は、二十数年を経た現在、まさに必読書として蘇った。ヨーロッパの難民問題とテロ、日本の民主主義の危機について、本書を通して新たに考えたい。
目次
他の岬―記憶・応答・責任
日延べされた民主主義
著者等紹介
デリダ,ジャック[デリダ,ジャック] [Derrida,Jacques]
1930‐2004。アルジェに生まれる。20世紀を代表する思想家。現象学の再検討から出発し、ニーチェやハイデガーの哲学を批判的に発展させる。脱構築、差延、散種、グラマトロジーなどの概念を作り出し、ポスト構造主義を代表する哲学者と目される。高等師範学校等の講師を経て、1984年から社会科学高等研究院でセミネールを実施。同時代の諸問題を西洋哲学の根本問題とともに論じ、晩年は「来たるべき民主主義」の思考を練成させる
高橋哲哉[タカハシテツヤ]
1956年福島県に生まれる。1983年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。哲学専攻。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授
鵜飼哲[ウカイサトシ]
1955年東京都に生まれる。京都大学大学院文学研究科卒業。フランス文学・思想専攻。現在、一橋大学大学院言語社会研究科教授
國分功一郎[コクブンコウイチロウ]
1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。高崎経済大学経済学部准教授。哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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