遠読―“世界文学システム”への挑戦

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  • サイズ B6判/ページ数 339,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622079729
  • NDC分類 904
  • Cコード C1098

出版社内容情報

少数の「正典」の「精読」で世界文学は語れるのか?膨大な数の小説をコンピュータ解析し進化論から文学史を論じる挑戦的比較文学論。テクノロジーや流通の革命・発達により世界がネットワーク化する今日、ごく少数(世界で刊行される小説の1%にも満たない)の「正典(カノン)」を「精読」するだけで「世界文学」は説明できるのか?
西洋を中心とする文学研究/比較文学のディシプリンが通用しえない時代に、比較文学者モレッティが「文学史すべてに対する目の向けかたの変更を目指」して着手したのが、コンピューターを駆使して膨大なデータの解析を行い、文学史を自然科学や社会学の理論モデル(ダーウィンの進化論、ウォーラーステインの世界システム理論)から俯瞰的に分析する「遠読」の手法だ。
本書には、「遠読」の視座を提示し物議を醸した論文「世界文学への試論」はじめ「遠読」が世界文学にとりうるさまざまな分析法が展開する10の論文が収められている。グラフや地図、系統樹によって、世界文学の形式・プロット・文体の変容、タイトルの傾向や登場人物のネットワークが描出されてゆくのだ。
21世紀に入り、人文学においても、デジタル技術を用いて対象や事象をデータ化し、調査・分析・綜合を行う〈デジタル・ヒューマニティーズ〉の方法論が拓かれつつある。「遠読」もまた世界文学に新たな視界を開こうとする比較文学からの挑戦なのだ――「野心的になればなるほど距離は遠くなくてはならない」。

近代ヨーロッパ文学――その地理的素描
世界文学への試論
文学の屠場
プラネット・ハリウッド
さらなる試論
進化、世界システム、世界文学(ヴェルトリテラトゥーア)
始まりの終わり――クリストファー・プレンダーガストへの応答
小説――歴史と理論
スタイル株式会社――七千タイトルの省察(1740年から1850年のイギリス小説)
ネットワーク理論、プロット分析

訳者あとがき
索引

フランコ・モレッティ[フランコ モレッティ]
1950年イタリア、ソンドリオ生まれ。現在、米国スタンフォード大学文学部教授。〈リテラリー・ラボ〉主宰。主な著書に、『ドラキュラ・ホームズ・ジョイス――文学と社会』(1983/邦訳、新評論、1992)『世の習い――ヨーロッパ文化における教養小説』(1987)『近代の叙事詩――ゲーテからガルシア=マルケスにいたる世界システム』(1995)『ヨーロッパ小説の地図帳 1800-1900』(1998)『グラフ、地図、樹――文学史の抽象モデル』(2005)『ブルジョア――歴史と文学のあいだ』(2013)『遠読』(2013/邦訳、みすず書房、2016)など。

秋草俊一郎[アキクサシュンイチロウ]
1979年生まれ。東京大学大学院人文社会研究科修了。博士(文学)。現在、日本大学大学院総合社会情報研究科准教授。専門は比較文学、翻訳研究など。著書に、『ナボコフ 訳すのは「私」――自己翻訳がひらくテクスト』(東京大学出版会、2011)。訳書に、クルジジャノフスキイ『未来の回想』(松籟社)、バーキン『出身国』(群像社)、ダムロッシュ『世界文学とは何か?』(共訳、国書刊行会)、モレッティ『遠読』(共訳、みすず書房)など。

今井亮一[イマイリョウイチ]
1987年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。2014-15年度サントリー文化財団・鳥井フェロー。専門は日米比較文学研究。論文に、「『大江健三郎自選短篇』における改稿をめぐって」(『れにくさ』第6号)など。翻訳に、カールソン「欧米における中上健次批評概観」(インスクリプト)、ベンディス『シークレット・インベージョン』(共訳、ヴィレッジブックス)、モレッティ『遠読』(共訳、みすず書房)など。

落合一樹[オチアイカズキ]
1988年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。専門は18世紀イギリス文学研究。論文に、“Soseki Natsume: or Sterne in the Japanese ’Rise of the Novel’”(The Shandean 24号)など。訳書に、モレッティ『遠読』(共訳、みすず書房)、ガシェ『読むことのワイルドカード』(共訳、近刊)。

高橋知之[タカハシトモユキ]
1985年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。専門は19世紀ロシア文学研究。論文に、「小さな預言者――若きプレシチェーエフと人格の構築」(『スラヴ研究』第63号)など。訳書に、モレッティ『遠読』(共訳、みすず書房)、『ポケットマスターピース10 ドストエフスキー』(共訳、近刊)。

内容説明

文学史の「正典」を「精読」するだけで“世界文学”は語れるのか?古今東西の文学作品を計量的に分析し、大胆な着想で伝統的文学研究を風さぶる革新的な論集。

目次

近代ヨーロッパ文学―その地理的素描
世界文学への試論
文学の屠場
プラネット・ハリウッド
さらなる試論
進化、世界システム、世界文学
始まりの終わり―クリストファー・プレンダーガストへの応答
小説―理論と歴史
スタイル株式会社―七千年タイトルの省察(一七四〇年から一八五〇年の英国小説)
ネットワーク理論、プロット分析

著者等紹介

モレッティ,フランコ[モレッティ,フランコ] [Moretti,Franco]
1950年イタリア、ソンドリオ生まれ。現在、米国スタンフォード大学文学部教授。“リテラリー・ラボ”主宰

秋草俊一郎[アキクサシュンイチロウ]
1979年生まれ。東京大学大学院人文社会研究科修了。博士(文学)。現在、日本大学大学院総合社会情報研究科准教授。専門は比較文学、翻訳研究など

今井亮一[イマイリョウイチ]
1987年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。2014‐15年度サントリー文化財団・鳥井フェロー。専門は日米比較文学研究

落合一樹[オチアイカズキ]
1988年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。専門は18世紀イギリス文学研究

高橋知之[タカハシトモユキ]
1985年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。専門は19世紀ロシア文学研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

袖崎いたる

11
小説が読者に現れるのは「読む」という近景においてでしかない。これまでの文学研究はその近景体験を踏まえた上での定性分析であり、読まれていない無数の小説を切り捨て、読まれるに値する少数の小説を俎上に乗せてきた。それに対して著者は敢えて「読まない」定量分析をする。そして形態分析、即ち「精読なきフォルマリズム」つまり「遠読」。しかしまだ手探りの段階であり、この著作から読み取れるものはまだ偉大な発見よりも多様な可能性というレベルであるように思われた。とはいえ村上春樹的な「時の試練に耐える小説」の定量的検討は甲斐有。2016/09/13

konomichi

5
何度も挫折して、今回ようやく読了。文学史研究者による世界文学をシステムとして捉え、データ分析を取り入れた永年の研究路程。この分野に素養が皆無で前半は辛かったが後半は面白い。文学史にダーウィンの進化論を取り込んで、文学史に残った作品と消えた作品を比較したり、文学素養がなくても楽しめる。今後の研究に期待したいが、その前に本著の前著、『グラフ、地図、樹』の邦訳をはよ。2017/05/14

へんかんへん

3
物語の図式化が面白い2017/11/29

Nobody1

3
文学史、そして世界文学へのアプローチとして出現した「遠読」という方法論は、計量的アプローチを取り込み発展した。自分がこういう方法論を取るかどうかはともかく、モレッティがしていることは面白いし意義のあることだと思う。遠読と精読が両輪のように絡み合いながら文学の世界が豊かになっていけばよいと思う。2017/09/05

鵐窟庵

2
本書では、各国の文学における共時的・通時的な盛衰や流行の影響関係を〈世界文学システム〉として分析を試みている。著者が参照するのはウォーラーステインの近代世界システムと生物学における進化系統樹と構造主義である。文学の盛衰の中心と周縁の関係や、内容とは独立したプロットや手がかりによる流行の対決関係、一つの作品内での登場人物のネットワークなどの様々な視点から文学空間を論じている。それらは文学の形式、地理学、類型に世界的に普遍的な有機体的なシステムでもある。しかし、アジアの位置付けは付随的で不足感が見られた。2018/12/31

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