内容説明
広範な分野の研究書を渉猟し、一行の裏に一行の論文、一冊の本をこめるように構築された、異色の精神医学史。
目次
古代ギリシア
ギリシア治療文化の外圧による変貌
ヘレニズムに向かって
ローマ世界とその滅亡
中世ヨーロッパの成立と展開
魔女狩りという現象
魔女狩りの終息と近代医学の成立―オランダという現象
ピネルという現象―一つの十字路
ヨーロッパ意識の分利的下熱
ピューリタニズムと近代臨床〔ほか〕
著者等紹介
中井久夫[ナカイヒサオ]
1934年奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授。精神科医(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mori-ful
1
中井久夫『西欧精神医学背景史』がやたらと面白い。脱線箇所だが、日本における「近代的自我」なる言葉の神話性を分析した箇所では、これは武士階級から引き継いだ「去勢感情」の現れであり、明治以来の西欧への「奇妙な被害感」は一九三〇年前半生まれまで続くとある。磯崎や中井、大江の世代だ。「薬学史の教えるごとく、薬物の発見は、化学工業の発達によること少なく、医学思想とserendipity(みつけ上手)とalertness(目ざとさ)と偶然とに負うこと、実に多いものである」など痺れる文章が多い。2023/07/15
tatuki
0
興味深かった。2017/03/29
オリハル|自称・思想家
0
西欧精神医学発展の歴史を、哲学・宗教・政治・文化等々多様な事象と関連づけて描き出した名著。著者は精神病理学の大家である中井久夫。 最大の見所は、中井の膨大な知識に裏打ちされた記述でしょう。あとがきにある「一行の裏に一つの論文、一冊の本」を意識して書かれた記述は、その博覧強記ぶりに読んでいてめまいがします。特に随所に挿入された事象相互の相関図は圧巻です。 それら膨大な知識が、「精神医学」という視点のもとでひとつながりになっていくダイナミズムも爽快。 精神医学に関心のある人は必読です。2020/02/02