内容説明
『精神医学ハンドブック』で知られる著者が誤診例をまとめた名著。再刊にあたり、「うつ病の労務災害」「発達障害」「精神安定剤・睡眠薬の副作用」など今日的なトピックを追加した。さらに最終章に加えた論考「精神科診断の宿命と使命」では、診断に必要な経験と知識、操作的診断運用上の注意点を踏まえながら、あらためて精神科診断の基本を整理する。精神症状のみならず付随する身体症状にも着眼した症例検討は、精神科以外の医師にも日々の臨床の一助となるだろう。研修医から精神科志望者まで、診断学への入口に最適の一冊。
目次
第1部 精神科診断における誤診と了解(誤診とは;了解をめぐって)
第2部 症例の検討(身体疾患の症状と了解;気分(感情)障害と了解
うつ病の労務災害と職場復帰
統合失調症と了解
パニック障害と了解
精神安定剤・睡眠薬の副作用
発達障害と了解
精神科診断の宿命と使命―常識的診断と操作的診断基準)
著者等紹介
山下格[ヤマシタイタル]
1929年札幌生まれ。北海道大学名誉教授(医学部精神医学講座)、北星学園大学前教授(社会福祉学部)。医療法人平松記念病院勤務(外来診療)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mizhology
9
真摯に向き合ってる先生でも、病気の特性上、診断は本当に難しいのだと伝わってきた。ある段階では診断がつかないというのも仕方が無いことを患者側も受け入れられると、治療が上手くいくのかもしれない。2019/09/30
Z
6
ベースにあるのはヤスパースの「了解」概念であり、これにつきると言えば尽きるのだが、表面的な観察だけでなく、患者の過去の振る舞いや傾向性から、患者の症状に向き合う著者の臨床の実例が描かれ、シンプルだが奥深い概念の理解に繋がる本だと思う。2024/06/07
K K
1
本書は北海道大学名誉教授の山下格先生が臨床現場で遭遇した症例集のような構成となっている。題名において、誤診した症例の反省・回想のような展開を期待していたが、著者の言う誤診例とは診断に難渋した症例や治療中に診断名を変更した症例を指している。発刊は遠い昔ではあるが、現在の精神科診療にも十分に通ずる内容となっており、提示されている症例内容も実践向きでバラエティにも富んでいる。巻末に現在の風潮となっているDSMに基づいた客観的で操作的な診断で陥りやすい点を加筆している。改めて身を引き締める思いで読了した。2021/01/26