内容説明
人が近代について考える時、ルソーの存在はつねに新しく、つねに重要な「問題」として発現してくる。安易な一般化を許さぬ、逆説にみちた近代思想の父・ルソーの生き生きとした「精神の運動」の内部へ深く沈潜することにより独自・鮮明なルソー像を描出した、カッシーラーによるルソー解読のための先駆的・基本的著作。
著者等紹介
カッシーラー，Ｅ．［カッシーラー，Ｅ．］ ［Ｃａｓｓｉｒｅｒ，Ｅｒｎｓｔ］
ドイツの哲学者。１８７４年旧ドイツ領ブレスラウ（現ポーランド領ヴロツワフ）に生まれる。ヘルマン・コーエンの下でカント哲学を学び、マールブルク学派の一人に教えあげられるが、近代認識論史の大著がある『近代の哲学と科学における認識問題』（１‐３巻、１９０６‐１９２０、４巻、１９５０）や『実体概念と関数概念』（１９１０）で独自の立場を確立し、さらに『シンボル形式の哲学』（１９２３‐１９２９）で言語・神話・宗教・芸術などを包括する文化哲学の体系をつくりあげた
生松敬三［イキマツケイゾウ］
１９２８年東京に生まれる。１９５０年東京大学文学部哲学科卒業。元中央大学教授。１９８４年歿（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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ころこ
34
『不平等起源論』に代表される個人の独立と自由、他方で『社会契約論』に代表される全体への屈服、同じ人物が書いた本に正反対の主張がなされている。これをどの様に理解し解釈すればよいかがルソー問題です。前者は『エミール』への言及が多く、その方が問題全体を理解しやすいのではないかと思います。著者はこの矛盾をこの様に解釈しています。①抑圧や束縛ではなく、一般意志による法のみが我々に自由を与え、自由を真に保証する。福祉国家や権力国家の不自由に対置されるのは法治国家である。②自然のままの独立を放棄することになるが、それは2021/09/11
壱萬参仟縁
32
１９３２年初出。ルソーとディドロ（フランスの精神諸力を一心に背負った人）との交友（１０頁）。ルソーは人間嫌い（１１頁）。因習的な社会（ゲゼルシャフト）の悪と堕落におちいることなしに真正なる人間社会（ゲマインシャフト）を建設することはいかにして可能であるか？ 『社会契約論』が課した問題。自由は、個人が自分の上に立てる厳格にして犯すべからざる法則への束縛（２３頁）。ルソーは法のみが人間に正義と自由を与えるという（２７頁）。ルソー自身は貧苦を味わっていた。物理的欠乏に対してストア派的平静さで対処した。2015/12/13
roughfractus02
7
ルソーは体系的ではないとする従来の考えに、著者は体系を「内的法則」と捉え直し、彼の思想の体系化を阻む『人間不平等起源論』と『社会契約論』の間の自由に関する矛盾、悪の存在は神の全能と善や正義に矛盾しないとしたライプニッツ的弁神論に対するルソーの解釈、様々に言及される感情の3つの難題に注目する。17世紀の演繹的厳密さと異なり、観察によって獲得される帰納的実践としての18世紀の体系概念の観点から、本書は、ルソーの自然法と自由の解釈を抽出し、倫理学から感情論を大胆に分離して、ルソーの概念ネットワークをマップする。2019/05/04
マーブル
5
著者はどちらかというとカントが専門のようだ。 カントを通じて知ったルソーについてのエッセーというところか。 たった100頁ほどなので、気楽に手に取ったが、意外にも手間取ったのはエッセーという気楽さ故か、章だても特にせず、気の向くままに書き連ね、書き広げ、終わりの見えない世間話のごときせいか。 とは言え、評価の定まらぬ、あるいは誤解を招いているルソーの著作、思想について自分なりの解釈を加え、断じているところは少なくなく、決して世間話で終わるようなものではない。 2019/06/27
林克也
1
個々の記述には理解できる箇所、賛同できる部分はあるが、全体としてルソーとは何なのかが、うまく理解できなかった。まだ私には敷居が高いのか、消化不良な気持ちを抱いたまま読み終わった。2015/09/16
