出版社内容情報
『エミールと探偵たち』はじめ数々の児童文学が各国で愛され、読み継がれるケストナーの唯一の大人向け長編。日本初の完全版。
ナチスの政権掌握の前夜、退廃的な空気に覆われたベルリン。「顔はあるが、頭のない」人間があふれる思考停止の時代を、詩情と皮肉、辛辣なユーモアをまじえつつ描く。ケストナーが残した唯一の大人向け長編小説にして最高傑作の呼び声高い埋もれた名作が、初版刊行時に削除された章とまえがき、あとがきを収めた完全版で登場。
第1章
ボーイが神託を告げる
にもかかわらず客は出かける
精神的にお近づきになるクラブ
第2章
じつに厚かましい女性が存在する
弁護士に異論はない
乞食をすると品格がそこなわれる
第3章
カルカッタで死者14名
間違ったことをすることが正しいのである
カタツムリは輪になって這う
第4章
ケルンの大聖堂のように大きなタバコ
ホールフェルト夫人は好奇心が強い
間借り人がデカルトを読む
第5章
まじめな会話がダンスフロアで
パウラ嬢はこっそり剃っている
モル夫人がグラスを投げつける
第6章
メルキッシュ博物館での決闘
次の戦争はいつ起きるのか?
診断が確かな医者
第7章
頭のおかしいやつが舞台に立っている
パウル・ミュラーの、死のドライブ
浴槽メーカーの社長
第8章
学生たちの政治運動
父ラブーデは人生を愛している
アウセンアルスター湖畔で平手打ち
第9章
風変わりな若い娘たち
死にたがった男が元気になる
クラブの名前は「従妹(クジーネ)」
第10章
不道徳のトポグラフィー
愛はけっして消えることがない!
小さな違いが大きな違い!
第11章
工場での不意打ち
クロイツベルクと奇人
人生は悪い習慣である
第12章
発明家がロッカーのなかに
働かないことは恥である
母親の来訪
第13章
百貨店とショーペンハウアー
男の売春宿
2枚の20マルク札
第14章
ドアのない道
ゼロフ嬢の舌
階段はスリだらけ
第15章
青年はどのようであるべきか
駅の意味について
コルネリアが手紙を書く
第16章
ファビアンは冒険を求めて出かける
ヴェディングでの銃声
ペレおじさんのノースパーク
第17章
仔牛のレバー、筋のないところを
彼女に自分の意見を言う
セールスマンが我慢の限界に
第18章
途方に暮れて家に帰る
警察はどうするつもりなんだろう?
悲しい光景
第19章
ファビアンが友人の弁護をする
レッシングの肖像がまっぷたつに割れる
ハーレンゼーでの孤独
第20章
自家用車のコルネリア
教授はまったく知らない
ラブーデ夫人が失神する
第21章
法学士、映画スターになる
昔の知り合い
母親が軟石鹸を売る
第22章
子どもの兵舎を訪れる
校庭で九柱戯(9ピン・ボーリング)をする
過去が角を曲がる
第23章
ピルゼン・ビールと愛国心
トルコ風ビーダーマイヤー
ファビアン、ただで([傍点]・・・)もてなされる
第24章
クノル氏には魚の目がある
日刊新聞(ターゲスポスト)は有能な人材を必要としている
泳ぎを習っておけ!
***
ファビアンと道学者先生たち
(初版には収められなかった、『ファビアン』のあとがき)
ファビアンと美学者先生たち
(初版には収められなかった、『ファビアン』のあとがき)
まえがき
(1946年に書かれた、『ファビアン』のまえがき)
まえがき
(1950年に書かれた、『ファビアン』のまえがき)
盲腸のない紳士
(版元の提案によりカットされた章)
内容説明
ワイマール共和国末期、頽廃的な空気に覆われたベルリンを舞台に、ファビアンというひとりの男の生活を通して時代と社会を痛烈に風刺しつつ、ひとつの真実を描いた本書は、1931年の初版刊行と同時に大きな反響を呼び起こした。深さよりは浅さを、鋭さよりは月並みを、曖昧さよりは明快さを大切にした、大胆なモラリストにして辛辣な風刺家ケストナー。その最高傑作とも評される長編小説を、初版から削除された章とあとがきとして考えられていた「ファビアンと道学者先生たち」「ファビアンと美学者先生たち」、さらに、戦後に書かれた二種類のまえがきを収めた初の完全版で贈る。
著者等紹介
ケストナー,エーリヒ[ケストナー,エーリヒ] [K¨astner,Erich]
1899‐1974。ドレスデンに生まれる。ライプツィヒ大学でドイツ文学を学び、1927年、ベルリンへ移って新聞・雑誌に演劇批評などを書く。1928年、詩集『腰の上のハート』『エミールと探偵たち』刊行。大成功をおさめた『エミールと探偵たち』に続いて、挿絵画家ヴァルター・トリヤーとのコンビで発表された痛快でユーモアあふれる作品は世界中で読まれ、ことに日本では、明るく前向きな児童文学作家としてのみ語られてきたが、ドラマ、台本、評論、詩集など、むしろ大人のための作品を数多く書いた
丘沢静也[オカザワシズヤ]
1947年生まれ。ドイツ文学者。首都大学東京名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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