出版社内容情報
謎の〈コーンヘッド〉など、アイルランド各地で見つけた不思議な「モノ」達から彼の国の歴史と文化をひもとく楽しい紀行エッセイ。
シング『アラン島』、カーソン『琥珀捕り』等の名訳で知られる著者がアイルランド各地で見つけた不思議な「モノ」たち――謎の〈コーンヘッド〉や埋もれ木細工のポプリ入れなどから、彼の国の知られざる歴史や文化をひもとく楽しい紀行エッセイ。イェイツをはじめとする文学者や独立運動の志士達も多数登場。図版多数。カラー口絵付。
内容説明
愛すべきささやかなモノたちが、小声で語りはじめた―。耳を澄ませばいつしか心は、彼の国の夕闇の裏路地、パブの喧騒、花咲く泥炭地や孤島の断崖へと誘われる。紀行・歴史エッセイ12編。
目次
1(ふるさとはデンマーク;スズメバチと閉所熱―トーリー島物語(1)
絵語りの島―トーリー島物語(2) ほか)
2(シャムロックの溺れさせかた;歌のごほうび;ハープ氏の肖像 ほか)
3(真鍮のボタン;もの言わぬ気球たち;パーネル通り ほか)
著者等紹介
栩木伸明[トチギノブアキ]
1958年東京生まれ。上智大学大学院文学研究科英文学専攻博士課程単位取得退学。現在、早稲田大学教授。専攻はアイルランド文学・文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
83
2013年刊行。第65回読売文学賞随筆・紀行賞を受賞。ここに登場するのは、木彫りの遠足馬車、子供向けの歴史本、騎士の肖像画、真鍮のボタンなどアイルランドの街角で見つけた12の「モノ」たち。古ぼけけたモノの素性や正体を探るなかに、自然とアイルランドの歴史・文化をたどるものになっている。著者の新作『ダブリンからダブリンへ』も読むことにしよう。2022/04/27
seacalf
44
緑美しい島で妖精伝説が今なお色濃く残るアイルランドの不思議なモノたち。奇妙な形のわら細工、ゲールタハトのトーリー島のフォーク・ペインティング、埋もれ木で作られたポプリ入れ、聖パトリック騎士団と思われる貴族の肖像画、古い共同墓地で拾った真鍮のボタン、モノたちをきっかけに縦横無尽に歴史や文化や逸話や愉快な捏造などが出ること、出ること。語られる内容の幅広さに途中で溺れそうになったが、岬めぐりが1番のお気に入り。今度訪れたら、きっとホウス岬に立ち寄ってその歴史の深さと景色の美しさ、美味なる海の幸を堪能したい。2024/01/27
M H
25
とても好きな訳者さんなので紀行エッセイも手に取る。やはりというべきか、端正な文章でアイルランドの歴史、文化が紐解かれ、そこに想像が合わさり心地良い時間が流れる。どの収録作にもうっとりしながら読了、特に掉尾を飾る「メアリーは「できません!」と言った」で損得とは別次元で闘う人へのシンパシーが心に残る。トレヴァーとコルム・トビーンの訳書ももっと読みたい。2022/05/29
あなほりふくろう
15
挫折というか、一旦、中断。ある程度アイルランドへの知識があって、その上で著者のエッセイを楽しむ質のものな印象で、ほぼゼロから知りたい自分にはちょっとハードルが高すぎたようです。解るところは素直に面白いと思えたし、他で勉強して、また。2015/04/26
algon
11
著者はアイルランド文学者であり翻訳家でもある。ウイリアム・トレヴァー、コルム・トビーン、クレア・キーガン等印象深い作品を生み出した国のモノ語り…。ふと目にした絵、馬車、わら細工、ボタンなど何気ないものから調べを尽くしてアイルランドの環境、文化、歴史を巧みに解説しながら紐解いていく。読了して少しは彼の国に入り込めたような。調べていくスタンスが堀江敏幸「その姿の消し方」に少々似ていると思ったが。「ふるさとはデンマーク」の章で映画「バベットの晩餐会」に似ている民家が出てきたが家もそんな共通点があったんだと。2023/12/29