出版社内容情報
スターリンが断行したジェノサイドの全容が初めて一冊になる。――飢餓殺人から大粛清まで。さらにヒトラーと正面から比較。
内容説明
ウクライナ穀倉地帯の飢餓殺人、富農の撲滅、カチンの森のポーランド支配階級虐殺、国内の全政敵の粛清は、これまでなぜジェノサイドと認められなかったか。殺戮の背後には、つねにスターリン個人がいた。この独裁者の成り立ちを探り、さらにヒトラーによるユダヤ人絶滅という「公認の」ジェノサイドと真正面から比較して、この議論の今日的な意味を問う。
目次
第1章 ジェノサイドをめぐる議論
第2章 ジェノサイド犯罪者の成長過程
第3章 富農(クラーク)撲滅
第4章 飢餓殺人(ホロドモル)
第5章 民族の強制移住
第6章 「大恐怖政治」(大粛清)
第7章 スターリンとヒトラーの犯罪
著者等紹介
ネイマーク,ノーマン・M.[ネイマーク,ノーマンM.][Naimark,Norman M.]
1944年ニューヨーク生まれ。スタンフォード大学で博士号取得(歴史学)。ボストン大学、ハーヴァード大学ロシア研究センターを経て、1988年からスタンフォード大学教授。ロシア・東欧史を講じる。同時に現在、フーヴァー研究所上級研究員。ジェノサイド、民族浄化を重点的に研究する
根岸隆夫[ネギシタカオ]
フランス政府給付留学生としてパリの国立政治学院で欧州政治史を学ぶ。専門は欧州全体主義(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
15
誰もが知っている名高い独裁者スターリン。彼の行いがジェノサイドに当たるのかどうかということを彼が実際にやらかした事例をつらつらと並べながら考察している。少数民族への迫害と殺戮、ウクライナでの飢餓粛清あたりは直球のジェノサイドだと思うけれど『ジェノサイド』という言葉の意味付けには各国の思惑が絡み合い、なかなか定義付けが出来ていないというのが実情らしい。勝てば官軍。同じようなことをしていても戦勝国のスターリンは敗戦国のヒトラー程にはその悪虐な行為を批判されないようで。歴史って何なんだろうと思ってしまう。2016/06/16
ののまる
15
この本と訳者解説に、ここ数年来の私の疑問に対する一つの答えがあった。今からの世界を見ていく上でも重要な指摘だ。何度も読み返して考えたい。2015/12/23
kenitirokikuti
6
図書館にて。原著の刊行は2010年。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争ときのスレブレニツァの虐殺(数千人の集団殺害)を、国際戦争犯罪法廷は05年にジェノサイドとした。またハーグ国際司法裁判所も07年に同じくジェノサイドとした▲国連ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)は、民族 ethnic、国民 national、人種 race、宗教の集団を代表とする。社会・政治集団は除かれている。後者は草案には含まれていたが、ソ連などの反対で除かれた。2021/09/20
Aby
6
スターリンの時代になされた強制移住と粛清は「ジェノサイド」と呼ぶべきか否か.国際政治において,なぜ「ジェノサイド」という用語の使用が制限される(されているように見える)のか,というところが本書の焦点.実際に何があったのかは『悲しみの収穫』や『共産主義黒書(ソ連篇)』がお薦め.「必ず皆から見えるように吊るせ」(p.50,レーニン)2018/06/21
おおた
6
ソ連史初心者にはハードルが高い本書は、スターリンがジェノサイドをやらかしたのかという定義・検証から、民族的・宗教的など多方面へ拡散していく。徹底した共産主義の実践に向けてジェノサイドが行われたということ、そこには外国人や宗教への嫌悪があり、債務支払いのためには植民地の飢餓は無視。それは内戦とレーニンから受け継がれたものである。ジェノサイドによってソ連邦を強くするというスターリンの動機について少し分かったような気がする。2012/10/28