出版社内容情報
精神医療が極端に手薄な「精神医療過疎の町」、北海道名寄市。見離されかけた町で開業した医師による、静かな怒りに満ちたエッセイ。
内容説明
膨大なうつ病患者、頻発する自殺、過疎による一人暮らしの高齢者の多さ、超少人数学級と子どもの発達障害…。北海道名寄市。最北の精神科クリニックからみた、過疎を懸命に生きる人々の姿。「あたりまえの医療」を提供したい―一人の医師の想いは、どこまで届くのか。静かな怒りに満ちたエッセイ。
目次
名寄へ
ひとまず、自殺の減った町
「諦観」と「去勢」
精神科医が足りない?
子どもたちの姿
診断と教育現場
北国のうつ病点描
「統合失調症」を生きる
老人医療の世界
町が死ぬということ
震災と医者
過疎の町で生きる
著者等紹介
阿部惠一郎[アベケイイチロウ]
1949年生まれ。1975年早稲田大学文学部卒業。1985年東京医科歯科大学医学部卒業。茨城県立友部病院、国立武蔵野学院、八王子刑務所、千葉刑務所を経て、創価大学教育学部教授・あべクリニック院長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
6
北海道上川北部の自殺率は、全国平均と比較し異常に高いという。特に女性のうつが多く、先立った夫のところに行きたいという希死念慮も見られるらしい。国土とそこに住む人々が互いに影響し合うことを、仏法では依正不二と説くが、過疎化による産業の停滞、地域の衰弱化が、住人の生命力とリンクしているのかもしれない。2019/02/07
鍵窪錠太郎
3
必要が有るので読んだが、著者の冷静なトーンで著者の目を通して見た北北海道の人・町・医療を書いている。著者は論文も相当数書いているが、雑誌での連載を意識したのか専門的な事にはあまり触れずに極力分かりやすく書いたように見受けられる。現場の目線を一端でも感じられたのは良かったのだが、別の視点(行政、教育現場など)も少し気になる所では有るので勉強会を開いて連携している人々と共著でも出されないかなぁと思わないでもない。2019/07/30
ワッピー
2
北海道名寄町で精神科クリニックを開業した医師のエッセイ。医療機関の採算、自殺の多さ、発達障害や病名診断など、簡単には片付かない問題がかなり淡々と描かれています。都会地の不登校児童を受け入れる「山村留学」のプログラムを行う過疎地であっても、その地域の適応障害はあるわけで、必要な時に必要な環境に速やかに移れるサポートサービスがあってもいいかもと感じました。もちろん、素人の思い付きですし、ちょっと考えただけでも、問題は山積みですけども・・・2012/02/18
sabato
1
北海道名寄町で日本最北の精神科クリニックを開業した医師のエッセイ。精神科は市立病院しかない。人口7万人。浦河べてるの家の時も感じたが、「人の密度が下がると人間関係密度が上がる」(p99)というのは、実は精神疾患という「病」の悪化を招くのではなく、その人本来がもつ、生きづらさや、しんどさと向き合うことになるのかもしれない。著者も書かれていたが、「私は皆さんを治せないかもしれない。でもそばにいます」(p126)が最も安心できる精神科医のアプローチなのかもしれない。2014/09/20
おなす
0
北海道・名寄市 興味深い2015/09/14