出版社内容情報
「スチューデント・アパシー」と呼ばれる大学生に特有の無気力症状を紹介した重要論文ほか、熟達の精神科医による臨床論集の第3弾。
内容説明
青年期のこころは、なぜ特有のアイデンティティ葛藤に揺れるのか。学生相談を礎とした臨床研究から40余年。診察室で出会う「青年」はあの頃と変わったか。著者が『青年期』という小著をあらわした70年代から80年代の主要論文を中心に、ひきこもりとうつ病の関係に触れた書き下ろし論考「クリニックで診る青年の「ひきこもり症」」を加えた、熟達の精神科医による臨床論集第3弾。
目次
青年期精神医学の現況と展望(一九八〇)
今日の青年期精神病理像(一九七六)
自立と個性化(一九七九)
大学生にみられる特有の「無気力」について(一九七一)―長期留年者の研究のために
アノレキシア・ネルボザァの心理的側面(一九八五)
家族についての精神医学的一考察(一九八三)
クリニックで診る青年の「ひきこもり症」(二〇一一)
著者等紹介
笠原嘉[カサハラヨミシ]
1928年神戸に生れる。京都大学医学部卒業。精神医学専攻。名古屋大学名誉教授。桜クリニック名誉院長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fonfon
6
私と家族の抱える問題の整理には役立った。私にも家族にも「心理的成長」というものがなかったのではないか?と愕然とした。といっても女性と男性では多いに異なるようである。「男性アイデンティティをめぐる悩み、この年代の男児の同年輩集団がしばしば、そのメンバーにかなり荒々しい男性確認的儀式の共有を要求する」~これが大問題だったのか?「男子学生についていわれたアイデンティティの危機に正確に対応するものは、女性の場合むしろ育児をほぼ終えた後の長いポスト青年期に来るのではないか」??釈然としない。どなたか助けて下さい!2012/07/05
ポカホンタス
4
青年期、スチューデントアパシー、アノレクシアネルボーザ、家族。1970年代から80年代にかけての著者の論考が収録されている。これらの概念がまだ初々しく、それを扱う著者の手つきも瑞々しい。臨床像のたんねんな記述から自然に浮かび上がってくるこれらの概念はまるで少年が捕獲した野生の昆虫のように生命感がある。それにひきかえ昨今の新概念提出のオンパレードは、はじめに概念ありきで本末転倒の仕業であることがよくわかる。2012/06/19
第9846号
3
勉強会にて。1970年頃からクローズアップされた、青年期特有の精神疾患についての論考集。1960年代まで青年期といえば良くも悪くも男性のものだったようです。でも笠原先生は摂食障害の記述を通して女の子の生きづらさを最初に大きく取り上げてくれたのではないでしょうか。この様な先生が先達にいらっしゃること、ありがたいです。2012/06/20
rootstock1998
1
随分と久しぶりな感のある著者だが、どことなく文体から優しさのにじみ出る笠原嘉先生はやはり好き。 臨床をその著作の根本に置いてあり、より現実感のある患者達の紹介はどこか勇気づけられる。 スチューデント・アパシーの患者らの経過報告は、それが僕自身の不安に直接的に語りかけてくるもので一概に喜んでばかりいられなそうである。 2018/01/16