内容説明
一神教が誕生して「進歩」や「歴史」の観念が生まれる前は、「時間」の感覚がどのように違ったか。もし私たちが暗に了解する終末論から解放されたら、どんな世界が見えてくるか。現代文明がキリスト教と科学技術の発展とを両輪にして疾駆してきた筋道を、糸をほぐすようにたどる。
目次
1 人間(科学か、ヒューマニズムか;恣意的進化の蜃気楼 ほか)
2 欺瞞(仮面舞踏会;ショーペンハウアーの難題 ほか)
3 道徳の害(磁器と命の値段;道徳の迷信 ほか)
4 救われざるもの(救済者;大審問官とトビウオ ほか)
5 無進歩(ド・クウィンシーの歯痛;時の環 ほか)
6 ありのまま(行動の慰め;シジフォスの進歩 ほか)
著者等紹介
グレイ,ジョン[グレイ,ジョン][Gray,John]
1948年生まれ。イギリスの政治哲学者。オックスフォード大学で博士号取得後、オックスフォード大学、ハーヴァード大学、イェール大学その他で教鞭をとり、2008年に引退するまでロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授(ヨーロッパ思想)
池央耿[イケヒロアキ]
1940年東京生まれ。翻訳家。国際基督教大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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garth
16
「古代ギリシアでは、哲学の目指すところは幸福、もしくは危難からの救いで、真理の探求ではなかった。真理崇拝はキリスト教の教義である」「科学原理主義者は、化学は公平無私な真理の探求であると主張する」ヒューマニズム=人間中心主義はキリスト教のパラダイムの中にある、と論証する。2016/10/13
脳疣沼
4
悲観的だが、なんとも説得力のある主張である。所詮、人間は人間でしかない。だから、ユートピアを思い描いても実現不可能。しかし人間だから、そこに突き進むしかない。悲観主義でいようがなんであろうが、どうしたって、人間でしかないのだから、もうどうしようもないのだ。2019/05/08
メルセ・ひすい
4
★5 一神教・基督に英国ケンブリッジPh.D.がつばを吐く・三つ子の魂なんとやら キリスト教ベースの哲学者はすべての論理づけがどこかで崩壊する。ショーペンハウアー様の牙城に到達するどころか、忌避・禁忌 ? 普段の表現を借りれば・人類は・゛地球の・毒虫・゛である。早々ホモサピを殺虫しないと地球を壊す!・当然・自称ヒューマニスト等々?「毒虫」からは抗議が殺到!★著者は( ̄∩ ̄# 刊行以前からの周到な゛罠゛である・・虚け者ども!天誅…2012/08/23
Masako3
2
★★★ 政治哲学者による。キリスト教と科学技術が導く、人類は進歩の果てに何らかの桃源郷に辿り着けると考える進歩主義を断罪している。人類は動物であり、歴史は進歩ではなく、経過だ。”新しい経済活動の目指すところは、略、はるかに多忙ながら、ひそかに自分は無用者ではないかと疑っている階層に快楽を提供して気を紛らわせることである”。なんて、痛切な一文だろう。そして、最後に”人生の目的は、ただみることだけと考えたらいいのではないか”とさらっと提言する。読んでよかった。2019/01/17
尾張こまき
2
面白かった!読みながらクレヨンしんちゃんの昔のOP(アレもダメ、ダメダメってやつ)が頭をぐるぐる。進歩信仰批判もこれくらい極端に言ってもらえると痛快ー!わかりやすい言葉で二重三重に皮肉の罠が張り巡らされ、平易な文章の中にも没義道、漁る、庶幾う、懐くなんてキラリと光る言葉が散りばめられてて油断できないわ!言葉と思想をめぐる考察に膝ポン。人口増に関してなど少し「?」もあるけど著者の主張は大体肯けます。断然支持。ただこれ、形而下で考えると。。。あと「地球」は「地球の表面」に置き換えて読みました。2013/11/28