内容説明
下巻ではまず経済産業界におけるナノテク開発とハイプの様相がとりあげられる。そこではハイプとバブルに向かう傾向と、徹底した現実主義が表裏一体となっている。本書全体のなかで見ると、経済関連メディア発の情報の偏りと目敏さの両方が浮き彫りになる。最終の二章で著者は科学技術の社会的・倫理的影響(SEIN)の研究の意義を訴えつつ、SEINをめぐる産・官・学の関係者それぞれの思惑と事情を率直に明かしている。科学技術と社会が相互作用する領域をユニークな手法で提示し、社会に駆動される先端科学技術の姿を映し出す本書は、21世紀における両者の関係を理解するための必読書となるだろう。日本のナノ・ハイプに詳しい監訳者の解説を巻末に付す。
目次
第7章 ナノ産業およびナノ起業家(ナノテクノロジーの経済;ナノテクノロジーのビジネス;既存の多国籍企業;新興企業およびベンチャーキャピタル;ナノシス新規株式公開の顛末;個人;ナノビジネス・アライアンス)
第8章 非政府組織とナノ(支持派;反対派;結論)
第9章 ナノハザードおよびナノ毒物学(時間枠、および時間枠に応じた倫理的見積り;不安と恐怖;ナノ毒物学への投資;ナノ毒性調査入門;リスク分析;環境上の懸念およびその倫理;結論)
第10章 ナノテクノロジーの社会的および倫理的影響の研究(診断;SEINの定義;象徴としてのSEIN;進行中の研究;SEINの状況;結論)
第11章 ナノ科学技術政策形成における公共圏(呼びかけ;公衆の状況;挑戦;公共圏の定義;科学と公共圏;公衆と対抗的公衆;運動について;実験;問題解決?;結論)
著者等紹介
ベルーベ,デイヴィッド・M.[ベルーベ,デイヴィッドM.][Berube,David M.]
ニューヨーク大学でコミュニケーション学を修め、1990年に博士号を取得したのち、バーモント大学教授などを経て、1990年にサウスカロライナ大学教授(コミュニケーション学)に着任。英語学科でディベート理論、スピーチ教育に携わっていたが、科学技術のレトリックの研究に足場を移し、サウスカロライナ大学ナノ・センター(USC NanoCenter)のナノ倫理部門長に就任。米国環境保護庁(EPA)有害物質汚染防止局(OPPT)の諮問委員会委員、国際ナノテクノロジー協議会委員などを務めた。2008年から現在、ノースカロライナ州立大学教授。ナノSTSおよび科学技術のパブリック・コミュニケーションに関して研究執筆を続けている。新聞に寄稿するジャーナリストとしての顔ももつ
五島綾子[ゴトウアヤコ]
科学技術著述家(元静岡県立大学経営情報学部教授、薬博・理博)。現在、ナノテクノロジーを中心に科学技術と社会の相互作用について研究を進めている。著書に『ブレークスルーの科学』(日経BP社、2007、パピルス賞受賞)など
熊井ひろ美[クマイヒロミ]
翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。