ドラゴンは踊れない

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  • サイズ B6判/ページ数 357p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622074083
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

カリブ海はトリニダード・トバゴの首都ポート・オブ・スペインの東に、スラム街ラヴェンティルはある。流れてきたごろつきども、哀しくもたくましい女たちがごった煮のように暮らす場所。ヤードに流れるカリプソのメロディー、そしてスティールパンの響き。定職ももたず、ひとりの部屋で、オルドリックは年に一度のカーニヴァルで自身が纒う壮麗なドラゴンの衣装をつくって一年のほかの日を過ごしている。ドラゴンにデビル、先住民、奴隷、アフリカの神々や伝説の英雄たち…祝祭の日にマスカレードのキャラクターを演じることは、それらを思い出すこと、伝えること、魂を吹き込むこと、そして、その力を自分たちのものにすること。祖先から受け継がれてきた奴隷制時代の記憶が呼びさまされる。自分たちのルーツを解釈し再演し、抵抗の声をあげよ!ところが、最近なにかが違う。外国資本の大企業に飼い慣らされたスティールバンド、抵抗の精神という根を引っこ抜かれたカーニヴァル!?オルドリックとスラムのボス、フィッシュアイの破滅的な抵抗が始まる。そして、17歳のシルヴィアとのせつない繋がり…。“語りの天才”ラヴレイスの、スピードとリズムに溢れた代表作。

著者等紹介

ラヴレイス,アール[ラヴレイス,アール][Lovelace,Earl]
1935~。トリニダード・トバゴ共和国の作家。トリニダード島のトコに生まれ、幼少期をトバゴ島の祖父母の家で過ごす。高校卒業後『トリニダード・ガーディアン』の校正係や森林監視人などの仕事を経たのち1964年にWhile Gods Are Falling(BP独立記念文学賞)でデビュー、以来カリブ海を代表する作家のひとりとして小説や戯曲等を発表。1966‐67年ワシントンのハワード大学に学び、1974年にジョンズ・ホプキンズ大学で修士号取得。アイオワ大学などいくつかのアメリカ合衆国の大学や西インド諸島大学トリニダード校で教鞭もとる。現在にいたるまでトリニダード・トバゴで執筆活動を続けている。著書にSalt(1996、コモンウェルス作家賞)など

中村和恵[ナカムラカズエ]
1966年生まれ。東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士課程中退。現在、明治大学准教授。英語圏および近現代日本の比較文学・比較文化研究。詩人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

秋 眉雄

25
クリスマスに半袖みたいな気候であり、音楽に溢れ、ノンビリとした生活があり、盛大なカーニバルが話の中心という、陽気な雰囲気が漂ってもおかしくない話にも関わらず、いっさいそんな場面は訪れない。人々が背負っている時代背景、人々が立っている国自体の成り立ち、すべてを覆ってしまうかのように登場人物全員に漂う寂しさと悲しみ、諦めと怒り。停滞も致し方ない状態でありながら、しかしその中で町も人も成長をするし、しようとする力がある。いつの間にかではなく、自ら変わろうとする。シビれるほどのパワーを感じさせてくれる傑作です。2020/03/01

きゅー

11
カリブ海に面した二つの島からなるトリニダード・トバゴという国がある。この物語は首都ポートオブスペイン近郊の貧民窟で生きる人々を描く。彼らの唯一無二の関心は年に一度2日間だけ開催されるカーニバル。舞台は1960年代、トリニダード・トバゴが独立してから間もない頃。何人もの登場人物がそれぞれの声で内心を吐露する。あたかも良質なルポルタージュを読んでいるかのようで、一人ひとりの感情の襞、ゆらぎが手に取るように感じられる。ラヴレイスの手腕は素晴らしく、登場人物たちがまさに今ここで生きていることを実感させられる。2020/12/02

yearning for peace

3
題から一見ファンタジー小説かと思ってしまいますが、ドラゴンはトリニダード・トバゴのカーニバルで纏う衣装のこと。予定よりも読了に時間を要しましたが、なんといっても濃密かつ巧緻な心理描写と今にも耳元に聞こえてきそうなカリプソのメロディーの文章に圧倒されます。章ごとの主役が入れ替わるなど、心憎い設定も見事です。1950~70年代のこの国の一端を垣間見ることができ、またとないよい機会になりました。それにしても時々何気なく生活の一部としてラムが登場するのですが、読了した今、久しぶりにストレートで飲みたくなりました。2009/06/06

susu

2
独立前後のトリニダード・トバゴ、人々の関心といえば年に一度のカーニヴァルだ。本書では、外国資本の流入によって変容していくカーニバルやコミュニティの様子が、庶民の視点で描かれている。断罪するのではなく、包容する。ラブレイスの筆致にはぬくもりがあふれている。なお、冨田晃氏による『祝祭と暴力』(二宮書店)はDVD付きなので、カーニバルの様子を知りたい場合は参考になる。2009/04/08

Aoka

1
すごくおもしろかったです。群像劇で、語りも心理描写も巧み。それ以上に血が通っているというか、情熱が感じられます。カーニバル、マスカレード、ドラゴン、カリプソのイメージが彷彿としてきます。ただオルドリックは、真の「ドラゴン」になれたのかな?2009/04/19

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