出版社内容情報
膨大な史料を読み込み、日本軍の対アジア人戦争犯罪、天皇の免責問題などの「通念」に含まれる誤解や曲解を解く。
内容説明
「勝者の裁き」の判決が今、国際人道法の発展に貢献している。広範な史料を読みこみ、多角的な分析から新しい東京裁判観を提示、戦後の「神話」を解体する。
目次
序章 なぜ今東京裁判か
第1章 ニュルンベルクから東京へ
第2章 裕仁天皇の起訴をめぐって
第3章 東条その他の主要戦犯容疑者
第4章 戦争史をどのように語るか
第5章 戦争犯罪に対する指導者責任
第6章 南京事件と泰緬「死」の鉄道
第7章 日本軍残虐行為の記録
第8章 初期の裁判研究家たち
第9章 パル判事の反対意見とその波紋
終章 勝者の裁きを越えて
著者等紹介
戸谷由麻[トタニユマ]
東京生まれ。2005年カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得(歴史学専攻)。ハーヴァード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所のポストドクトラル・フェローを経て、ネヴァダ大学ラスベガス校の歴史学部助教授。2008年からハワイ大学マノア校の歴史学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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メロン泥棒
2
現代の国際法を踏まえた上で東京裁判を改めて読み直し様々な定説を覆す傑作。マッカーサーは代表者と言うだけで強い権限はなく、天皇の責任追及については問題を棚上げにしていただけという見方ができる。日本軍の残虐行為や人体実験についても訴追するつもりがあったにもかかわらず検察側の立証能力不足で立件できなかった。パル判事の意見はその後の国際法の流れに反する内容にすぎず、正しいとは言い難い。その他、なるほどと思わせる斬新な分析が多数。東京裁判に興味があるなら是非押さえておきたい。2010/11/05
aki
1
2009年初版。「落日燃ゆ」で東京裁判に興味を持ち、手に取った。東京裁判での広田死刑の判決は、同時期に行なわれたニュルンベルク裁判との比較では不当といえないこと、また、近年それらは国際的に有用な判例として認められていることを知った。本書は、国際法史や裁判後の評価の流れをたどりながら、東京裁判の意義を分析・評価している。東京裁判のみの視野の狭い裁判評価ではなく、国際的な広い視野で東京裁判を評価(成果と問題点どちらも)しており、そのような評価により東京裁判は今後に生かされるべきとの論旨に納得した。2021/02/21
カラコムル711
1
東京裁判についてゴミのような政治的ねらいの本が多い中、学問的な是非とも読むべき好著。ニュルンベルグ、東京裁判の基本原則がようやく今頃、国際法に革新的貢献をなしたことがわかる。醜い居直りの非学問的東京裁判批判本の、嘘と程度の低さ、悪質さを根本から批判できる本。2015/07/25
よしひろ
1
日暮氏の著作同様、非常に丁寧な分析をしている。こちらは、司法としての東京裁判に注目している。終わりの部分に出てくる藤田氏の論文は読んでみたい。2014/01/21
マイケル
1
東京裁判を肯定する立場からの解説書。かなり実証的に東京裁判を分析している。2009/01/22