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五月の霜

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  • サイズ B6判/ページ数 256p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622073307
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

主人公のナンダ・グレイはカトリックの寄宿女学校に入学し、宗教の厳格な規律に則った生活、信仰と自我、友人関係、階級の問題など、さまざまな問題に悩みながら、大人の世界に近づいてゆく。しかし彼女はある事件によって、この学校のシステムと決定的に対立することになる。A.ホワイトは日本では殆ど知られていないが、英国では著名な作家で、本書を含む四部作では、シャーロット・ブロンテを継ぐ存在と高く評価されている。また、エリザベス・ボーエンはヴィラーゴー版の序文で本書を、「少女のスクール・ストーリーのなかで、古典として残る唯一の作品」と賞讃している。

著者等紹介

ホワイト,アントニア[ホワイト,アントニア][White,Antonia]
1899年にロンドンに生まれる。本名はアイリーニ・ボッティング。父親はパブリック・スクール、セント・ポール校の古典の教師で、カトリックへの改宗者であった。アントニアは九歳から十五歳までをロンドン郊外の聖心修道院付属の寄宿学校で過ごしたが、『五月の霜』はこの時期の体験をもとにしている。退学後、コピー・ライターや女優、ジャーナリストなどとして活躍。結婚・離婚を三度、恋愛もいくつか、一時期は精神障害のため施設にも入るなど、起伏の多い人生を送った。1933年に出版された『五月の霜』は『迷える旅人』『砂糖の家』『ガラスの壁』とともに四部作を成し、シャーロット・ブロンテの後継者とも評価されている。ほかに30冊以上のフランス文学を翻訳、モーパッサンの『女の一生』の翻訳では賞を受けている。1980年死去

北條文緒[ホウジョウフミオ]
1935年東京に生まれる。1958年東京女子大学文学部英米文学科卒業。1961年一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。東京女子大学名誉教授。イギリス小説専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

121
カトリック寄宿学校の厳しさが描かれている。主人公のナンダは、作者自身の事であるのだと思うと、放校になった一生徒の視点で書かれているという事を忘れてはいけないと思う。登場する人物達の描写が不十分であったり、主人公にはどこか安定しないように思え、作者が放校という事実、父親との愛憎を受けとめるために吐き出す必要のある葛藤の物語であると感じた。カトリックの学校だけがこのように厳しいわけではないと思う。2016/10/06

まふ

113
20世紀初頭の英国女子修道院系列女学校での著者の自伝的な厳しい教育とその破綻の経緯が描かれる。聖心女子修道会がモデルとされるらしいカトリックの立場からの少女たちへの厳しいしつけと教育の様子が大半を占める。プロテスタントからの改宗者として11歳でこの学園に送り込まれた少女ナンダは豊かな才能と気配りによって3年間の在籍期間中に優秀生徒の評価を得るが、こっそり書いていた小説が学校側にバレて退学の処分を受ける。カトリックの修道女たちの厳格な教育の実像がそれなりに理解できたが、厳しすぎる。G496/1000。2024/04/28

NAO

62
プロテスタントであり学者である父親がカトリックに改宗したことで、カトリックに改宗しカトリックの寄宿学校に入った少女の葛藤と挫折。もともとイギリス国教会というプロテスタントの国であるイギリスにはカトリックの寄宿学校がほとんどなかったが、何校か作られた学校は、カトリックの上流階級の子女の行儀作法と外国語や教養を身につける花嫁修業の場として、ヨーロッパ中の令嬢が集まるところだった。そんな学校に、主人公は、プロテスタントからの改宗者、中産階級という二重の場違いな存在として入り込むことになった。⇒2022/03/11

藤月はな(灯れ松明の火)

49
少女の敬虔な信仰への傲慢さから向き合うからこその疑問の芽生え。しかし、伸びやかな自由への芽吹きは静かな狂信を持つ大人が作り出す環境によって潰えてしまう。教師の親への報告とは大人が世界が狭い子供に対し、最も最低だが効果的な手段である。最も信頼していた父親に「お前を見損なった」と罵倒された挙句、密告を強要される場面の傷は読んでいる側も心を壊されるかと思う程の衝撃がある。シスターや学長は「真の信仰を見出すためには一度、破壊されなければ成長できない」というが、それは宗教の大義という名を借りた精神的な虐待ではないか2016/03/04

ぱせり

13
冬を耐えて、やっと咲き始めた花々を、思いもかけない寒気があっというまに打つのめしてしまうのも、また五月なのだ。痛々しい物語だが、読んでいる間とても楽しかった。豊かな感受性の花開く時。美しいものへの憧れ、心豊かな友人たちとの小さな集いは、小さな灯のように明るい。 2013/05/20

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