内容説明
林立する超高層ビル群の下、路地は奇想の森と化していく―『闇のなかの石』(伊藤整文学賞)『群衆』(読売文学賞)『日光』の著者が放つ連作「掌篇小説」全41篇。
著者等紹介
松山巖[マツヤマイワオ]
1945年、東京に生まれる。東京芸術大学美術学部建築科卒業。作家、評論家。評論・エッセイ『乱歩と東京―1920都市の貌』(PARCO出版1984、ちくま学芸文庫1994、双葉文庫1999/日本推理作家協会賞)『うわさの遠近法』(青土社1993、講談社学術文庫1997、ちくま学芸文庫2003/サントリー学芸賞)『群衆―機械のなかの難民』(読売新聞社1996/読売文学賞)小説『闇のなかの石』(文藝春秋1995/伊藤整文学賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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秋製
36
お薦められ本。 ちょっと怖く、ブラックユーモアに満ち溢れた41編からなる連作掌篇小説(ショートショート)集。「ホホエミ食堂」というキーワードつながりで、複数のリンク作があった。ブラックユーモアが好きな人は楽しめる本だと思った。2013/07/08
メイ&まー
17
猫目とか猫町とかじゃなく猫風船とな。なんやろ、猫風船。読み終えても尚よく分かりません、なんやろ(笑)。ごく短いお話ばかり41篇。全く別個のお話ともとれるけど、おやおや?読んでく内に読者は、いつの間にかこの風変わりな町の住人になってしまっています。ホホエミ食堂で老人たちの話に耳を傾け、見知らぬ少年に先導され、町かどで死んだはずの知人に出くわし、そして猫風船はみるみる膨らみ上昇してゆく…。ここで暮らす住人たちはどんな最期を迎えるのでしょうね。2014/03/01
Roy
14
★★★★★ 異界、幻想といった大袈裟なものではないけれど、同じ著者の「日光」を読んだ時にも思ったことだが、昼間うとうとまどろんでいた時にみる、言うなれば白昼夢のようなショートショートだった。現実に隣接する少し不思議な空間にとても自然な形で移行してくれ、その空間に身を預けることがとても心地よい。基本、ショートショートの尻切れ感が嫌いなのだけれども、これは大好き。あと「幸せ」について少し考えた。2009/03/29
Penguin
9
【図】「ロボットがあなたの家にやってくる」と手書きで書かれたチラシ。"死ぬほど退屈な方。友達の少ない方、一日に数回タメイキをつく方。金持ちでない方。歯並びの悪い方。死にたいと思うことがある方。セロリの好きな方。掃除の苦手な方。整理の苦手な方。スポーツの苦手な方。いままでペットをかったことのない方。 旅行が好きでない方。いまは独り暮らしの方。 借金のない方。ラーメンがお好きな方。 五十歳以上の方。日本人の方。 お酒の好きな方。これらの条件を満たす方に、二十年かけて完成したロボットを格安でお譲りしたい。 2012/08/15
ばー
8
短篇集。初めての作家さん。建築家卒の評論家兼作家らしいです。面白そうな著作がたくさん。また読んでみたく思う。作風は、なんというか、不思議な話が多いです。幻想的でありながら、どこか不吉。これらの作品群はまさに現代の奇譚。話しかけても無視されているような、決定的な差異があるのにも関わらず共に生活できてしまうような、そんな印象を受ける。ああそうか、これってつげ義春的な?これを書いてて閃く。ぐるぐると奇妙な世界は回っていく。とてもいいですね、これ。2014/07/07