内容説明
経済史研究、マックス・ウェーバー研究で日本の社会科学に大きな足跡をしるした大塚久雄。今年はその没後10年に当たる。『大塚久雄著作集』の担当編集者だった石崎津義男のことを大塚は、「なにか共著者のような気持さえする」と言っている。私事についてあまり細かく話さない大塚だが、石崎には幼少時からの過去についていろいろと語った。それは『著作集』完結後もつづき、分厚いメモが石崎の手許に残った。それに時代背景を加えて整理したのが本書である。左脚切断、左肺の3回にわたる大手術、戦前の右翼からの攻撃、戦後の“大塚史学”批判、『株式会社発生史論』(1938)の刊行、『欧州経済史序説』(1938)の朝鮮人学生への影響…。幼年時代から晩年まで、大塚久雄の人と学問を知るための稀有な書である。
目次
戦前・戦中時代(幼少時代;青年時代;西洋経済史との出会い;東大助手となる ほか)
戦後(三回の肺手術;『共同体の基礎理論』;『西洋経済史講座』;欧米への旅 ほか)
付 資本論講義
著者等紹介
石崎津義男[イシザキツギオ]
1930年東京に生まれる。東京教育大学付属高等学校卒。1949年岩波書店入社、宣伝・営業・製作・編集・経理の業務に従事。1990年専務取締役、1997年退社(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
88
大塚さんの著作集の編集に携わった石崎さんが、大塚さんの幼少のころからの話を聞いてまとめたものです。私は西洋経済史講座や著作集をかなり読んだのですが、大塚さん本人のことはあまり知りませんでした。まして資本論講義というテープが遺されていてそれをこの本に収めたということで貴重な資料であると思いました。大塚先生が資本論を講義しているなんて思いもかけませんでした。2015/12/15
ぽん教授(非実在系)
6
大塚久雄著作集の編集に関わった著者は大塚本人から自伝的な話をいろいろ行ったという。そのときのメモに基づいて書いたという。そのため、大塚の記憶によるところが大きく平賀粛学のところなどは最新の研究で明らかになった全貌とはずれている。それでも大塚しか経験しなかったであろうエピソードも多く、マルキストとの論争・対立も大塚からすれば右派と同様だったことや指導教員である本位田教授との複雑な関係も描かれている。そういった意味で極めて面白いものであった。2015/11/17
トキ
1
大塚久雄の資本論講義を読みたい、また、一人間としての研究者の一面を知りたい、という気持ちで読み始めた。研究成果 (新知見) である論文を執筆する為には基本(基礎知識)が無ければならないが、研究成果があるからこそ基礎知識である講義に信頼性が生まれ、研究者の専門領域の土台である基本に対する解釈が出てくる。 私たち一般人は初めて或る分野に関する解説本を読む際に、何が正しくて何が正しくないかが判断し難い。基本の (基礎知識) 解説こそ信頼性を持つ研究者が行わなければならない。その意味で、本書の資本論講義は良い。2019/12/24
i-miya
1
幼児左腕骨折のち左足切断、戦後左肺3回大手術、3人の子供、貞子夫人の労、2006.06.23、岩波書店退社、1907.05.03生まれ、京都、湯浅蓄電池重役の父、金剛流能楽、野溜、アイデアル香水、中学柔道、骨折判明、子守、日蓮関係の本、母の死、父と久雄、弟と2人の妹、<青春時代>第三高等学校文乙、陸上競技部、波多野精一先生、弟子に三木清、内村鑑三の本、1917.11 ロシア革命、2年生の5月 1925.05、治安維持法、1926.01 京都学連事件、1927.04 東京大学経済学部、就職する方針、金<西洋2006/11/23
TA
0
レーベンの部分ははっきり整理された。多数のエピソードは大塚という人間への理解にとってとても役に立つ(本人晩年の語りによるものなので信ぴょう性に要チェックな部分を含むにもかかわらず)。知識とレーベンとのつながりは確認すべきところが残されている。2021/04/17